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地銀21行・グループは減益ラッシュ。新たな収益モデル模索へ

「新規の取引先がもうないと思っていても、まだ企業はある」(地銀協会長)

【中部】融資、中小・個人にシフト


 もとより銀行間の金利競争が激しかった中部地方。マイナス金利が拍車をかけ、さらなる金利低迷を招いている。各行は預金調達費用の削減を図ったり、貸し出し先を金利が稼げる中小企業や個人向けにシフトしたりして、マイナス金利の影響を抑えるのに躍起だ。

 岐阜県が地盤の十六銀行は、譲渡性預金の金利抑制に動いた。16年4―9月期末残の譲渡性預金は1189億円と前年同期より560億円減少。

 静岡銀行は資金運用収益や国債等債券売却利益の減少が響き、経常収益は前年同期比7・9%減となったが、貸出金利息は2・5%増と8期ぶりのプラスとなった。中小企業や個人向けの融資強化が効を奏した。

 一方、ほくほくフィナンシャルグループの北陸銀行は、貸出金利息収入は下がったものの、中小向けの貸出増や、与信関連費用の減少で経常利益は増加した。

 16年4―9月期は「マイナス金利下でも落ち着いた形で推移した」(庵栄伸頭取)。15年からの北陸新幹線開業効果が「底堅い」(同)ことも業績を下支えした。

【近畿・中国・四国】非金利部門、拡大に活路


 近畿、中・四国の主な地銀は日銀のマイナス金利政策導入後も市場の資金需要が盛り上がらず、本業のもうけを示す実質業務純益が池田泉州銀行を除き減益となった。

 製造業などで設備投資に盛り上がりを欠く中、マイナス金利政策の影響によって「貸出金利が低下し収益確保が厳しい。貸し出しボリュームでカバーしている」(京都銀行の小林正幸専務)状況だ。

 近畿大阪銀行も「金利競争の激化や債券利回りの減少などから上期5億円、通期で10億円程度の減益要因になっている」(中前公志社長)という。一方、池田泉州銀行は「不動産などを中心とした地元中小企業向け貸し出しが堅調に推移した」(田原彰取締役専務執行役員)。

 今後の収益源として広島銀行は、「保険手数料やビジネスマッチングの仲介料など非金利部門で、安定収益を見込む」(池田晃治頭取)。

 近畿大阪銀行の中前公志社長は「グループ連携で不動産やM&A、マッチング事業など法人ソリューション商品を強化する」考え。中国銀行は「成長産業を中心に企業価値や成長につながる高付加価値な融資を追求していきたい」(宮長雅人頭取)とした。

【九州】資金需要深耕で利益確保


 九州各行はマイナス金利による貸出金利回りの低下で資金利益が伸び悩む。不動産や個人向け、医療・介護など資金需要がある分野の貸出量を増やすなどして利益確保に拍車をかける。

 ふくおかフィナンシャルグループ傘下の福岡銀行は17年3月期の当期利益(単体)で増益確保の見通し。中小企業向けの貸し出しを積み上げるほか情報通信技術(ICT)を利用した個人向けの取り組みに力を入れる。柴戸隆成頭取は「マイナス金利をクリアするには相当の努力が必要」と述べた。

 西日本シティ銀行はマイナス金利での貸出金利回りの低下などで利ざや縮小が影響し、実質業務純益(単体)、当期利益ともに減益を予想。谷川浩道頭取は「業界全体が厳しい収益環境にあり、当社も厳しい環境に置かれている」としている。

 ただ直近は不動産やマンション建設需要などで貸出金を増やしており、中小企業向けも増加傾向にある。今後も貸出量は堅調とみる。谷川頭取は、10月に持ち株会社化したことを踏まえ「金利で争うのではなく、グループの総合力を発揮し付加価値の高いサービスを提供する」と意気込む。
日刊工業新聞2016年11月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
どのみち金融庁は地方金融機関の再編を目指していた。それがマイナス金利で早まっただけ。反グローバルリズムの流れの中で、ローカル経済の重要性さらに高まるはす。そこにしっかりビジネスを確立した地銀は生き残るし成長余地もある。

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