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ホンダジェットに吹き荒れる乱気流

生産計画遅れ、エンジン受注白紙に

藤野氏に聞く 「パナマ、アルゼンチンも有望市場」


ホンダエアクラフト社長・藤野道格(みちまさ)氏
 ―足元の市場と見通しは。
「少し増えるとみていたが、9月までの納入台数は前年比8%減となった。経済の先行きが不透明になると慎重になる顧客がいる。今後2―3年の間にプラスに転じるのでは。長期的には増加傾向になる」

 ―納入開始から5年後に単年度黒字化という目標は変えますか。
 「生産の立ち上げが半年遅れている。今の状況だと計画より遅れそうだが、目標に追いつけるようにしたい」

 ―課題は。
 「部品の信頼性を安定させないと円滑にラインが流れない。サプライヤーを含めビジネス全体として生産ペースを上げることだ。そのためには組み立て作業者の技能を早期に高める必要がある。競合企業と技能が高い技術者を取り合う事態にもなっている」

 ―部品の信頼性向上に向けた具体策は。
 「サプライヤーで品質検査をしているが不適合部品が出荷されてしまう。品質の検査法や基準を変えて不適合品が集荷される前にキャッチする。サプライヤーに常駐して支援する場合もある」

 ―北米、欧州、ブラジルに次ぐ有望市場はどこですか。
 「パナマ、アルゼンチンが有望だ。最近中東からの問い合わせも多く、近く開催される中東のエアショーでデビューする」

(藁谷氏<左>と藤野氏)

藁谷氏に聞く 「エンジンの中核部品を内製化」


ホンダエアロ社長・藁谷(わらがい)篤邦氏
 ―部品内製化の狙いは何ですか。
 「以前は協業相手の米GE認定の元で作っていてGEのサプライヤーを使わざるを得なかった。米連邦航空局の製造認定を取得し自社でサプライヤーを選べるようになった。今回一部の主要部品を品質、コスト、納期の観点で選んだ。エンジン技術を磨く上でキーとなる部品を内製化していきたい」

 ―日本のサプライヤーを選ぶ可能性は。
 「これまで欧米系のサプライヤーが多かった。日本、海外に関わらず、品質、コスト、納期が最も優れたサプライヤーを選ぶ。開発段階で日本のサプライヤーと試作をした関係がある。機会があればそういう企業と仕事をしたい」

 ―市場環境は。
 「機体メーカーの新機種開発ペースが落ちている。底は打っているが、しばらく大幅な回復には到らない。ホンダジェットとそれ以外の受注の比率を半々とする目標だが、それがいつ実現できるかは見えにくい」

 ―ホンダはエンジンと機体を生産するメーカーですが、外販のネックになりませんか。
 「機体とエンジンは別の事業と考えている。ホンダジェットの競合メーカーの情報が漏れないよう人員も組織も分けて運営している。顧客から懸念する声があるが、信頼関係を築きつつある」
日刊工業新聞2016年11月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
鉄道大国・日本のビジネスジェット市場はごくわずか。保有機数ベースで100機もありません。しかし北米では1万3000機以上のビジネスジェットが保有されています。今後は世界中で市場拡大が期待されています。ホンダジェットも納入開始から間もなく1年。記事によると苦戦しているようですが、何とか上昇気流に乗ってほしい!

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