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iPSで精神・神経疾患を解析、理研などで研究成果相次ぐ

統合失調症の創薬に期待、ALS治療薬にも効果
iPSで精神・神経疾患を解析、理研などで研究成果相次ぐ

左は明視野観察法で観察したニューロスフィアの写真と、SOX2たんぱく質の蛍光染色写真の比較(理研提供)


人材育成と海外との交流


 さらに、今後も日本がiPS細胞研究をリードすることを目的に、人材の育成や海外との人材交流に力を入れている点も特筆され、その財政基盤の一助として京大iPS細胞研究基金が立ち上げられました。

 海外の優秀な若手研究者をフェローシップやインターンシップで雇用したり、基礎研究から臨床応用に向けて、それまで不安定な身分だった研究者や研究支援スタッフを10年単位で安定的に雇用したりしていくための寄付の受け皿となるものです。

 リオデジャネイロオリンピックでもそうですが、日本人がメダルを取ったり、あるいはノーベル賞で日本人の受賞が決まったりすると、われわれは自分のことのようにうれしくなります。

 とはいえ、精神面での応援はあるに越したことはないにせよ、先端研究には多額の資金が必要ですし、公的な研究費だけですべてが賄えるわけではありません。日本には寄付文化が根付いていないからこそ、iPS細胞のように広く社会が恩恵を受ける可能性の高い研究はついては、一般からの「目に見える」支援もある程度必要なのではないでしょうか。

ということで、当方もその趣旨に賛同し、少額ながらiPS細胞研究基金に寄付をさせていただきました。「科学技術立国」は科学者や企業の研究者、政策立案者だけに任せておけばいいというものではありません。欧米のように、日本にも一般社会が研究を支援する文化が定着し、科学への期待が、明日の科学につながることを願ってやみません。
(文=藤元正)

日刊工業新聞電子版2016年8月22日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
理研もいろいろあったが、「再生」の道を歩んでいる。今後も大学や産業界と連携し患者やその家族、関係者に希望を与えて欲しいと切に願う。

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