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自動車市場を狙え!三菱ケミカル、グループ融合へ「同じ釜の飯を食う」

20年度に売上高5割増の4500億円狙う。窓口も資本も効率化
自動車市場を狙え!三菱ケミカル、グループ融合へ「同じ釜の飯を食う」

三菱レイヨンは伊ランボルギーニと炭素繊維分野の開発検討で提携(9月16日)


EV、ようやく欧州に春の予感


 「韓国の電池メーカーが動くなら真剣に考えないといけない」。三菱化学執行役員の荒木良剛はそう語る。休止している英国のリチウムイオン二次電池(LIB)用電解液工場を、2017年にも再稼働させる方針だ。

 LIB世界大手のLG化学がポーランドに、サムスンSDIもハンガリーに電気自動車(EV)など車載向けの工場新設を計画する。17―18年に相次ぎ稼働するため、欧州での電池部材需要も急拡大が予想される。

 10年頃にEVブームに期待を膨らませて英国へ進出したものの、市場は立ち上がらず。ようやく訪れそうな“欧州の春”の予感に、荒木は「実績のあるプラントであり、他の電解液メーカーは同規模の工場を持っていない」と、先行者利益を享受したい考えだ。

 自動車メーカーは新しい技術・製品に対してあくまで慎重だ。大幅な軽量化に貢献できる三菱レイヨンの炭素繊維も我慢が続く。同社取締役の福居雄一は「今はドアの内側などに限られているが、我々は最終的に構造材料での採用を目指している」と言い切る。

 鉄など金属材料との競合になるが、コスト高を上回る一体成形の強みを訴える。20年の車向け炭素繊維市場は現状比3・4倍の2万5000トンに拡大すると予想。福居は「車でトップポジションを獲得したい」と意気込む。

(ドイツ・デュッセルドルフで開催された「K2016」のMCPPブース)

 成長戦略のカギは現在、三菱樹脂傘下にいるスイス・クオドラントとの連携が握る。このエンジニアリングプラスチック世界最大手は全世界で41拠点を構え、21カ国に進出している。

 三菱樹脂執行役員の木村武司は「クオドラントは三菱ケミカルホールディングス全体で見ても、多様でグローバルなキーアカウント(主要取引先)、サイト、ノウハウを持つ」と自負する。

 福居も「特に欧州で車メーカーや航空機メーカー向けの販売チャンネル、拠点を多く保有し、大きなシナジーが期待できる」と胸を躍らせる。炭素繊維とエンプラは、統合新社の事業部門「高機能成形材料」で同じ釜の飯を食うことになる。

 三菱ケミカルHDは20年度に自動車関連部材の売上高で現状比約50%増の4500億円を目指す。グループ融合が加速すれば、目標の早期達成も可能だ。
(敬称略)

※日刊工業新聞では「挑戦する企業・三菱ケミカルホールディングス編」を連載中
日刊工業新聞2016年10月24日/25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
三菱ケミカルHDは来年1月1日付で日本化成を完全子会社化する。同社は傘下企業の統合や子会社化を進めており、まだまだ効率化できる部分はある。中国では石油化学の基礎原料であるエチレンの能力増強が進み、世界的な生産過剰が迫る。統合による効率化と同時に、技術シナジーを創出し新しい材料、分野を開拓しないといけない。自動車の先には航空機、ヘルスケアなどもある。

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