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出生前診断を改めて考える

正しい情報を知ることの意義とは

診断はゴールではなく、はじまり


 鮮明な画像で胎児の状態がはっきりとわかるようになること、はっきりとした診断がつくことは、はじまりに過ぎない。「正確な状態を把握できると、その次は、それは治るのか治らないのか、産まれてきたらどうなるのか、というように考えるべきことが絞られてきます」と夫医師。

 「クリフムでは、状態に応じて、脳や心臓など専門医にカウンセリングや治療を行ってもらえるようコーディネートしています。その前にきちんとした診断がついていなければ、どこにどう繋げばよいかもわかりません。的確な診断がつけば、次はどこへ行ったら治療できるのか、という話になります」

 「医師にも専門領域があり、どこでも治るというわけではありません。妊娠中だけでなく出産後のことも含め、そうしたコーディネートをしっかりするのが、当院の役割と考えています」

 そして、診断のその先には、心のケア、「寄り添う医療」の大切さがある。今回の二組の夫婦も繰り返し語っていたのが、配偶者や親、子供など家族に加えて医師の支え。Aさん夫妻の場合、中絶という厳しい選択が影響し、奥さんは2年間ほど自宅に引きこもるような状態が続いた。そこでは、夫医師が心の支えになったと言う。

 「長い間、立ち直れないでいた私は、周囲から『世の中にはもっとつらい思いしている人もいる』とか、『いい加減早く立ち直りなさい』と言われました。身近な人でさえ、わかってはくれない。夫先生は一番よくわかってくれました。1年以上たってもメールで相談に乗っていただくなど、先生の存在自体が私の支えでした」(妻)。

出産・避妊は女性の自由意志に委ねられているが


 国連の国際人口開発会議では、Reproductive Health Rights(性と生殖に関する健康と権利)という考え方が示され、妊娠・出産・避妊などについて女性自らが決定権をもつというのが世界的なコンセンサスになっている。

 決断は自由意志に委ねられているとはいえ、それは決して簡単ではなく「こうだったらこう」と安易に類型化できるものではない。出生前診断を受けるか受けないか、診断結果を受けてどのように決断するかは、赤ちゃんの両親次第。

 しかし、その選択の前提であり出発点になるのは「より的確な情報・診断」であることは、おそらく間違いない。それが早期であればあるほど、話し合ったり心構えを整えたりする時間を充てられ、より“自分たちらしい決断“にたどり着く助けとなるだろう。
GE Reports Japan 2015年10月14日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
血液から胎児の染色体異常を調べる新型の出生前診断がスタートして3年半。受診者は3万人を超えたが、最近、厚生労働省の指針に沿っていない診察をうたう医療機関が登場し波紋を呼んでいる。厚労省の指針では、出産時の年齢が35歳以上、3種類の染色体異常で検査、夫婦らの意思決定を支える遺伝カウンセリング体制の整備が実施施設の条件。全国の認定施設は現在74施設。問題になっている医療機関はカウンセリングがなく、採取した血液を海外の検査会社に送って調べ低価格で診断を行うもの。医療機関側は、診断を受けたくても受けられない人が多くいる、早く診断することが大事、海外で一般的な診断が日本でできないのはおかしい、などと主張している。本記事は1年前に公開されたもの。男性と女性とは考え方が異なるだろうし、医師が妊婦や夫婦間のウェットの問題にどこまで介入していけばいいのか、人の尊厳にも関わるとても難しい問題と感じる。

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