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スバル、電動車両にも安心・愉しさ。「PHVは量産開発に着手する」

武藤取締役インタビュー。3年間で研究開発費に3600億円
スバル、電動車両にも安心・愉しさ。「PHVは量産開発に着手する」

昨年の東京モーターショーで公開した20年ごろの将来技術を集めた「ヴィジヴ フューチャー コンセプト」

 富士重工業が研究開発投資を積極化している。2016年―18年度の研究開発費は過去最大規模となる3600億円を計画する。自動運転車、電動車両など開発領域が広がっているためで、開発資源を有効活用するかじ取りが問われている。武藤直人取締役専務執行役員に戦略を聞いた。

 ―運転支援システム「アイサイト」をベースにした自動運転車の開発を進めています。
 「17年に高速道路の同一車線上で渋滞時に前方車両を追従する自動運転機能を、20年には自動で車線変更する機能を実用化する。20年の自動運転機能にはアイサイトとは別に周辺検知用のセンサーなどが必要になるが大幅なコストアップは避けたい。いかにシンプルな部品構成で実現できるか。技術屋の知恵の見せ所だ」

 ―自動運転車は一部メーカーが市販化するなど競争が激化しています。
 「我々は事故をなくし、ドライバーの命を守るために自動運転技術の開発を進めている。これまでにアイサイトで事故を減らした実績があり、運転支援分野で大きなアドバンテージがある。後れを取っているとは思わない」

 ―18年にプラグインハイブリッド車(PHV)を、21年に電気自動車(EV)を投入する計画ですが進捗(しんちょく)は。
 「PHVは先行開発が終了し、量産開発に着手するところ。EVはちょうど基礎開発の第1段階が終わったところで、どのようなスペックのモーター、電池を積めばいいのかはだいたい決まった」

 「どちらの車種にも今秋発売する新型『インプレッサ』から使い始める新車台を採用する。これにより電動車両であってもこれまでのスバル車と同様『安心と愉(たの)しさ』を実現した商品に仕上げる」

 ―日本IBMと自動運転分野で提携しました。どのような取り組みをしていますか。
 「日本IBMのサーバーを開発拠点に構築し、アイサイトが取得した膨大な走行データを効率的に運用する体制を整えた。具体的なことは決まっていないが、IBMは人工知能(AI)の知見も持っており、将来的には自動運転技術の高度化に生かしたい」

【記者の目・次の一手を打つチャンス】
 富士重はトヨタ自動車など大手と比べれば開発資源が限られる。新車台を活用することで次世代車の開発が効率化するとはいえ、環境技術や自動運転技術をめぐる競争はさらに激化する。特に自動運転など新分野にスピード感を持って挑むには、日本IBMと提携したように異業種との連携が欠かせない。業績が好調な今こそ次の一手を打つチャンスだ。
(文=下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年10月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
武藤さんはインタビュー中、「従来からドライバーの命を守ることを追求してきて、その延長線上に自動運転がある」とし、「無人での利用を想定した完全自動運転車は絶対にやらない」と何度も繰り返していた。富士重の前身は航空機メーカーの中島飛行機で、安全にとことんこだわったモノづくりを続けてきた。結果、運転支援システム「アイサイト」の開発につながった。こうしたDNAを自動運転技術の開発に存分にいかしてほしいし、どんな商品になるのか楽しみでもある。 (日刊工業新聞第一産業部・下氏香菜子)

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