官製再編による“日の丸原発’はプラスかマイナスか
燃料事業統合が「良くも悪くもアリの一穴になる」
「もんじゅ」「東電」・・経産省の思惑は
17年に予定される国の「エネルギー基本計画」の見直しに合わせ、経済産業省は年内に電力システム改革や原発の廃炉・再稼働、高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめとする核燃料サイクル、東電問題などエネルギー政策にかかわる懸案事項に一定のめどを付ける意向。
この動きに連動する形で三菱重工や日立、東芝、IHI、日本製鋼所などの原発関連機器メーカーの再編を進め、「福島第一原子力発電所事故を契機に市場そのものが収縮し、体力が衰えた国内原子力産業の人材育成、技術力維持を図る」(関係筋)。燃料事業の統合は自然な流れといえそうだが、焦点はその先にある原子炉を含めた“日の丸原発”だ。国内では今後、老朽原発の建て替え(リプレース)議論が浮上する可能性もあるが、再稼働が進まぬ中、技術力を保持し続けるのは容易ではない。
一方、海外では中国やロシア、韓国が政府支援の下で世界の原発市場で存在感を高めている。経産省は東芝の不適切会計問題を機に、原発機器業界の合従連衡再編を進めようともくろんできたが、メーカー各社の足並みがそろわなかった。
同床異夢の寄せ集め集団?
そのような中、燃料事業を統合する持ち株会社の設立は「良くも悪くもアリの一穴になる」(関係筋)。くしくも廃炉を含めた検討が始まった「もんじゅ」は日立、東芝、三菱重工、富士電機が参画したプロジェクトで、日の丸原発の象徴になるはずだった。
仮に官製再編で原発機器メーカーの統合が進んだとしても、各社がエースを出し惜しみ、同床異夢の寄せ集め集団ができるだけならむしろマイナスだ。“一品料理”が主の原発事業で規模の経済が働くのかどうかも極めて不透明だ。米GEや仏アレバなど海外のパートナーを含め、慎重な議論が必要になるのは間違いない。
(文後藤信之、長塚崇寛、鈴木真央)
日刊工業新聞2016年9月30日