大都会・東京でも野菜が育っている!「江戸東京野菜」ブランド化なるか
東京23区内には、地元野菜の地産地消や名産化で地域活性化に挑む街がある一方、古くからある野菜を残そうという活動も存在する。それが江戸時代から栽培されている『江戸東京野菜』だ。化学肥料などがなかった時代から栽培され、育てるのが非常に難しく、農家も少ない。その希少価値を生かし、全42種類のうち一部がブランド化されている。
知名度高い「練馬」を守る
「練馬大根のおかげで地元の漬物屋がある。大切な伝統を残したい」と話すのは、練馬漬物事業組合(東京都練馬区)の組合員で雅香岡田(同)の岡田隆社長。練馬区で栽培される練馬大根を活用し、年1回「ねりま漬物物産展」を開催する。練馬大根は辛みが強いのが特徴で、主にたくあんとして食する。物産展は約3000本のたくあんを一斉販売するなど盛況だ。
練馬区は23区を代表する農業地。農地面積218ヘクタールを有し、23区総合計の約3分の1を占める。知名度の高い練馬大根を地域資源として守るべく、農商が連携を続ける。
にんじんをスイーツに
大田区で栽培されている「馬込三寸にんじん」を使った「馬込三寸にんじんまんじゅう」を販売する御菓子司わたなべ(同大田区)。渡辺和彦社長は「ここでしか買えないものであることが大事。大田区の名物で商店街を含めて地域を活性化させたい」と話す。
馬込三寸にんじんは固くて甘いのが特徴。練り込んでも繊維が残り、にんじんの味が消えない。白あんとの相性はいいが、配合バランスには苦労したという。渡辺さんは大田区商店街連合会の副会長も務める。馬込に残る1件の農家と連携し、そばに馬込三寸にんじんを練り込むなど、商店街を挙げてアイデアを出し続けている。
新宿でとうがらし復活プロジェクト
新宿御苑が信州高遠藩主・内藤家の江戸藩邸だった当時に栽培されていた「内藤とうがらし」。八房系の品種で、鷹の爪に比べて辛さは控えめだが、香りやうまみ、風味がある。そば人気が高かった江戸時代に、薬味として人気を博した。
この内藤とうがらしを復活させたのはボランティア団体、内藤とうがらしプロジェクトだ。新宿区民に苗を5000本配布し、区内の学校に食育用としての導入も行う。10月1―10日には「新宿内藤とうがらしフェア」を開催。歴史展示を始め、伊勢丹、高島屋、新宿高野、中村屋など各店舗が参加し、料理や物販で新宿全域を“赤く”染める。
JA東京中央総務部総務広報課の林岳人課長代理は「東京の農家はほぼ全てが兼業農家。量産せずとも経営が成り立つため、栽培が難しい野菜作りにも挑める」と話す。希少価値を生かしたブランド化の動きは、さらに進みそうだ。
(文=南東京・門脇花梨、茂木朝日、高橋沙世子、松崎裕)
日刊工業新聞2016年9月26日