パナソニックは7次サプライヤーまで管理できるのか。RoHS規制の脅威再び
2019年7月から電気ケー分などに使うフタル酸エステルの使用制限
東芝、簡易評価法を開発
東芝はもっと早く、17年1月にフタル酸エステル含有製品の調達をやめる。早めにフタル酸エステルの代替物質を評価し、代替可能かどうかを判断するためだ。
RoHSでは技術的に代替が難しい製品があると、規制の適応を猶予する「適応除外」がある。18年1月の申請期限までに評価し、必要に応じて適応除外を求める。
代替物質はトリメリット酸系(TOTM)やアジピン酸系(DINA)など。コードは曲げ伸ばしを繰り返すため、耐久性など品質を見極めないと正式採用に踏み切れない。
同社は対応方針を早く決めたおかげで、既に販売時点情報管理(POS)システム、オフィス複合機、テレビ、パソコンの一部機種で代替化が完了。それでも66製品群のうち、56製品群に対象製品がある。19年7月までに対象外の製品も含めて代替化する方針だ。同社環境推進室の池田理夫参事は「フタル酸エステルは有用な物質なので影響が大きい」と話す。
また、含有を検査する簡易スクリーニング手法も開発する。高度な分析装置を使わずに確認できるという。納入品の全数検査ではなく、材料の切り替え時などに絞って簡易スクリーニングをする方向だ。池田参事は「非含有の担保は難しい。どこまでデューデリジェンス(リスクの洗い出し)をするのか悩ましい」と打ち明ける。
納入禁止・代替化を前倒し
富士通は6月末、フタル酸エステル4物質の使用を回答してもらう調査票を作成し、取引先に配布した。含有製品の調達禁止は19年1月だが、前倒しで代替化していく。同社環境本部の永宮卓也氏は「長いサプライチェーンのことも考え、早めに動きだした」と話す。
ソニーは18年4月から納入を禁止する。NECは原則18年7月からの納入をやめる。三菱電機は18年末までに購入品の代替化を完了させる予定だ。日立製作所は19年1月にグリーン調達基準を見直し、グループ各社が取引先に使用禁止を求める。
欧州連合(EU)の緊急情報システム「RAPEX」のウェブサイトに化学物質規制違反の摘発情報が掲載されている。
パナソニックによると1300件以上の摘発があった。ここ数年、日本企業の摘発例はないが、加盟国は常に目を光らせている。もし摘発されるとリコールに発展し、回収費用が発生する。最悪だと市場から閉めだされる。
RoHSが施行された06年当時と違い、海外調達が増えた現在は、サプライチェーンの上流側の企業との関係が希薄になった。その分、製品へのフタル酸エステルの混入リスクが高まる。対応のために、サプライチェーンの見直しも迫られそうだ。
(文=松木喬)