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清水建設会長 宮本洋一「日本の社会資本整備と都市インフラ」を考える

「コンパクト&ネットワーク」の発想が不可欠

いまの日本は都市政策を見直す絶好機


 日本の人口が7年連続で減少した。一方で、東京圏への人口流入は進んでおり、前年より人口が増加した6都県のうち四つを東京、神奈川、埼玉、千葉の東京圏で占めている。

 とりわけ私が深刻に受け止めているのは、大阪や愛知、福岡といった大都市圏や札幌、仙台などの中核都市からも東京圏への人口流入や企業移転が進んでいる現状である。都市が社会的な変化を受容し新たな産業やイノベーション創出の“舞台”としての機能を発揮し続けるには、それぞれの機能や特徴を明確にした施策が必要だ。

 もはや、すべての自治体が公共交通網や医療・福祉サービスといった都市機能すべてを“フル装備”できる時代ではない。拠点となる地域に適切な機能集約を図り、周辺地域と交通やITネットワークで結ぶ「コンパクト&ネットワーク」の発想が不可欠と考える。

 高齢者はもとより、あらゆる人が快適に暮らせるよう、徒歩圏内に必要な生活基盤を維持する一方、地域間の連携によって公共サービスの維持や効率化を進める。どの地域にどの機能を集約するのが最も効果的か、政策ならびにエリア内での「選択と集中」を進めることが肝要だ。

 ところが、国の政策が地方創生において「選択と集中」の色彩を帯びてくると「わが町を見捨てるのか」「取り残された地域はどうなるのか」といった極論が展開されがちである。

 これは全く逆である。スプロール化によって無秩序に拡大し、非効率化した社会資本や生活インフラを再構築することは、暮らしやすさを取り戻すとともに、都市が持つ潜在的な経済効果を引き出す。行政コストの削減にもつながる。

 いまの日本は都市政策を見直す絶好の好機である。4年後に迫る東京五輪・パラリンピック開催国として、世界の目が注がれる一方、高度成長期に造られた社会インフラの維持・更新も待ったなしだ。

 都市はイノベーションの“発信基地”、創造的な活動の“舞台”である。経済界としても、経済社会の変化に対応した最適な都市の姿を先取りしたい。

 世界から企業や人材を集め、新技術・新産業を生み出すグローバル拠点として世界の都市間競争で優位性を発揮する。このビジョンの実現に向けて中長期的な視点であるべき姿を積極的に発信していくことが、私の切なる「思い」である。
日刊工業新聞2016年8月31日/年9月1日/2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
国交省2017年度予算の概算要求で、公共事業関係費は前年度の当初予算に比べて16%多い6兆183億円。自民党も旧来型の「国土強靱化」を目指す二階幹事長が就任し、地方への予算バラマキ感が臭う。

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