【連載】挑戦する地方ベンチャー No.9 Payke
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商品の『ストーリー』を外国人へ
同社は沖縄発のベンチャー。しかし、古田社長の出身は東京である。「都内の私立高校に通っていましたが、学校が面白くなくて中退。各地を放浪もしたのですが、その後沖縄に憧れて移住を決め、琉球大学に進学しました」。
しかし入学後、アルバイトをしようと仕事を探してみたところ、「沖縄では時給650円というバイトがほとんどで驚きました。東京では高校生の時給だってもっと高いですよ。これでは稼げない、ということで自ら事業を興すことにしました」。
まずはBtoC分野でのEC事業を立ち上げ黒字化させ、その後貿易会社と提携し越境EC分野にも展開。日本の特産品を中国人向けに販売し始めた。
その中で外国人に日本の商品を説明する難しさに課題を感じ、悩んだ末に「商品の『ストーリー』が購買意欲をかきたてるのに重要だ」と気付いた。黒糖やちんすこうなど一見外国人には理解できないものでも、ストーリーと合わせて伝えると好評だった。
そしてこの事業経験を通して、地元企業が自社製品の良さをほとんど伝えられていないという状況を思い知る。その頃ちょうど、沖縄の人気が高まり外国人観光客が増加。Paykeのようなサービスが今後必要になってくると感じ、開発に着手した。
訪日客へのニーズ調査や、企業へのヒアリングなどを行いながらサービスを設計。サービスローンチ前の開発途中から営業を開始した甲斐もあり、ローンチ時には30社の導入が決定。商品情報がデータベースに登録されている状態になっていた。
「地方は『○○さんの会社がやっているならうちもやろう』という動きがあるので、まずは最初のクライアントを集めるところに注力しました」。ローンチ後には那覇空港などでも利用されるようになり、現在では沖縄の土産物を扱う食品メーカーなどはほとんど導入している。沖縄である程度のモデルが構築できたことで、他の地方での横展開も考えている。
「地方→地方」「都市→全国」に展開
一方で、インバウンドで大量購入されているのが医薬品や化粧品。これらのメーカーは地方ではなく、東京・大阪など都市部に集中している。
従ってこれら都心部にも支社を設け、大手メーカーにも導入を進めている。都市部の大手メーカーが導入すれば、おのずと全国中の流通にも広まる。すでに約数百社がシステムを導入している。
このように「地方→地方」、「都市→全国」という2つの戦略を軸に急速に展開している同社。急速に導入企業が伸びている理由に、無料で導入企業を広げているということがある。加盟企業が増えると、サービス内で企業同士の競争が起こるので、より精度の高い情報が登録されるようになるのだ。
現在は無料版で導入企業を拡大しているが、今後はより訴求効果を高めるページカスタマイズや、他社商品と差別化する機能、データ分析機能が追加された有料版を提供していくという。既にいち早く有料版に切り替えるメーカーも少なくない。「いかに消費者が『買いたい』と思える情報を入れられるかがポイントになってくる。そのために機能を追加していく予定」。
沖縄スタートアップのロールモデルに
「沖縄発のいわゆるスタートアップ企業は上場した例がなく、その皮切りになりたい」と古田社長は意気込む。「沖縄県内には上場企業が5社程しかなく、身近にロールモデルがいないこともあって、起業したい人も一歩踏み出せない雰囲気がある。そんな環境を変えたいと考えています」。
現在、営業拠点は東京(関東)と福岡(九州)に置いているが、開発拠点は沖縄。琉球大学の学生やOBも参加している。「沖縄自体には海や自然、人柄、気候など魅力がたくさんある。そんな沖縄に惹かれ自分みたいに集まってくる人もいます。最近、起業家支援制度なども出てきていますし、少しずつスタートアップに関する熱気も帯びてきた感覚があります」。
沖縄をはじめ日本の優れた製品を海外に紹介、ひいては沖縄のスタートアップを全国レベルに引き上げる存在にするべく、
Paykeの挑戦は続く。
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