小学校でプログラミング教育必修化!情報サービス各社がサポートに動く
国家戦略に民間の力は不可欠
情報サービス関連企業などが社会貢献活動の一環として、小学生を対象としたプログラミング教育に取り組んでいる。プログラミングを通じて創造力や表現力を養い、次世代IT技術者の育成を支援するのが狙いだ。
伊藤忠テクノソリューションズは2015年から「未来実現IT教室」を開始した。米アップルのタブレット端末と無償提供のプログラミングソフト「ピョンキー」を利用して「自分だけの物語」を創るという内容だ。
CSR課の市川陽子課長は「参加者は非常に意欲的に取り組んでいる。ITを使いこなさないと(進学や就職が)難しい時代になった。プログラミングの意義に気付いてほしい」と教室の目的を説明する。
一方、NTTデータは04年から小学生を対象としたプログラミング教育「こどもIT体験」を行っている。これまで時代の変化に合わせて、内容を見直してきた。
現在は子どものやる気や習熟度に合わせた三つのコースを用意している。一つは文部科学省のプログラム専用オンラインツール「プログラミン」を利用してアニメーションを作成する入門コース、二つは同じくゲームを作成する挑戦コース、三つはヴイストン(大阪市西淀川区)の車型ロボットとソフトを利用したロボプログラミングコースだ。一緒に参加する保護者からは「思考能力の向上に役立つと思う」などの意見が集まり、一定の評価を得ている。
また異色な取り組みを行っているのが、菓子メーカーの江崎グリコ。スマートフォン専用アプリケーション(応用ソフト)「グリコード」を開発し、小学生低学年を対象としたプログラミング教育を支援している。「ポッキー」など自社商品をモチーフに、手軽に遊びながらプログラミングのロジックを学べる。
「食を通じて社会に貢献する」という理念の下、お菓子を題材にしたグリコードで次世代を担う子どもたちに発想力や創造力、コミュニケーション力を養ってもらう。総務省が推進する「プログラミング教育実施モデル実証事業」にも選定されている。
若年層へのプログラミング教育は、20年度から小学校で必修化が検討されるなど見直されつつある。その一方で同教育の普及には、教育人材の不足や教育現場のIT環境の整備など課題は多い。これには国や自治体などからの協力も必要だ。次世代IT技術者の育成に向け、教育イベントの開催やアプリの提供など各社の地道な活動も重要度が増しそうだ。
(文=松沢紗枝)
経済産業省は、日本のIT人材不足の推計を発表した。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などによる社会のデジタル化が進展して需要が増える一方、国内の労働人口は減少。現在の不足人数約17万人が、2020年に2倍強の約37万人に、30年にはさらにその2倍強の約79万人に増加する。経産省は女性や外国人材など多様な人材の活用や業界の労働環境改善などの必要性を挙げた。
国内のIT人材は現在約92万人いる。19年ごろまで微増が続くが、その後は減少に転じて30年には約86万人になると推計した。
東京五輪・パラリンピックで特に求人が増えそうな情報セキュリティー人材では、不足人数が現在の約13万人から20年に19万人へ拡大。IoTや人工知能などの活用に携わる先端IT人材でも不足人数が現在の1万5000人が20年に5万人弱へ急増する。
同省は人材確保に向け、人材の多様性や流動性の向上、スキルアップ支援のほか、過酷とされる労働環境を改善して業界の魅力を高めるべきだとした。
政府はインターネットを通じたプログラミング教育の提供サービスに関し、特定商取引法で定める「特定継続的役務」には基本的に該当しないとの見解をまとめた。パソコン教室と同様に特定継続的役務に該当するとなった場合、一定の要件で契約締結時の書面交付が義務付けられたり、クーリングオフ制度や中途解約などに関する民事ルールが適用されたりするが、ネットを用いたプログラミング教育はこうした規制の対象外となる。
新規事業について、既存の規制が適用されるかどうかをあらかじめ所管省庁に確認できる「グレーゾーン解消制度」に基づく民間事業者からの照会を受けて、消費者庁と経済産業省が検討した。
その結果、パソコンそのものの操作に関する知識や技術を教える行為と一体不可分でない限り、特定継続的役務には当たらないとの判断になった。経産省ではネットを通じてプログラミングの教育を提供する新しいサービスが創出され、優れたエンジニアの育成につながると期待している。
<次のページ、何歳からプログラミングを学ぶべきか>
伊藤忠テクノソリューションズは2015年から「未来実現IT教室」を開始した。米アップルのタブレット端末と無償提供のプログラミングソフト「ピョンキー」を利用して「自分だけの物語」を創るという内容だ。
CSR課の市川陽子課長は「参加者は非常に意欲的に取り組んでいる。ITを使いこなさないと(進学や就職が)難しい時代になった。プログラミングの意義に気付いてほしい」と教室の目的を説明する。
一方、NTTデータは04年から小学生を対象としたプログラミング教育「こどもIT体験」を行っている。これまで時代の変化に合わせて、内容を見直してきた。
現在は子どものやる気や習熟度に合わせた三つのコースを用意している。一つは文部科学省のプログラム専用オンラインツール「プログラミン」を利用してアニメーションを作成する入門コース、二つは同じくゲームを作成する挑戦コース、三つはヴイストン(大阪市西淀川区)の車型ロボットとソフトを利用したロボプログラミングコースだ。一緒に参加する保護者からは「思考能力の向上に役立つと思う」などの意見が集まり、一定の評価を得ている。
また異色な取り組みを行っているのが、菓子メーカーの江崎グリコ。スマートフォン専用アプリケーション(応用ソフト)「グリコード」を開発し、小学生低学年を対象としたプログラミング教育を支援している。「ポッキー」など自社商品をモチーフに、手軽に遊びながらプログラミングのロジックを学べる。
「食を通じて社会に貢献する」という理念の下、お菓子を題材にしたグリコードで次世代を担う子どもたちに発想力や創造力、コミュニケーション力を養ってもらう。総務省が推進する「プログラミング教育実施モデル実証事業」にも選定されている。
若年層へのプログラミング教育は、20年度から小学校で必修化が検討されるなど見直されつつある。その一方で同教育の普及には、教育人材の不足や教育現場のIT環境の整備など課題は多い。これには国や自治体などからの協力も必要だ。次世代IT技術者の育成に向け、教育イベントの開催やアプリの提供など各社の地道な活動も重要度が増しそうだ。
(文=松沢紗枝)
IT人材、2020年に37万人不足
日刊工業新聞2016年6月11日
経済産業省は、日本のIT人材不足の推計を発表した。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などによる社会のデジタル化が進展して需要が増える一方、国内の労働人口は減少。現在の不足人数約17万人が、2020年に2倍強の約37万人に、30年にはさらにその2倍強の約79万人に増加する。経産省は女性や外国人材など多様な人材の活用や業界の労働環境改善などの必要性を挙げた。
国内のIT人材は現在約92万人いる。19年ごろまで微増が続くが、その後は減少に転じて30年には約86万人になると推計した。
東京五輪・パラリンピックで特に求人が増えそうな情報セキュリティー人材では、不足人数が現在の約13万人から20年に19万人へ拡大。IoTや人工知能などの活用に携わる先端IT人材でも不足人数が現在の1万5000人が20年に5万人弱へ急増する。
同省は人材確保に向け、人材の多様性や流動性の向上、スキルアップ支援のほか、過酷とされる労働環境を改善して業界の魅力を高めるべきだとした。
ネット教育、消費者保護の対象外に
日刊工業新聞2015年1月7日
政府はインターネットを通じたプログラミング教育の提供サービスに関し、特定商取引法で定める「特定継続的役務」には基本的に該当しないとの見解をまとめた。パソコン教室と同様に特定継続的役務に該当するとなった場合、一定の要件で契約締結時の書面交付が義務付けられたり、クーリングオフ制度や中途解約などに関する民事ルールが適用されたりするが、ネットを用いたプログラミング教育はこうした規制の対象外となる。
新規事業について、既存の規制が適用されるかどうかをあらかじめ所管省庁に確認できる「グレーゾーン解消制度」に基づく民間事業者からの照会を受けて、消費者庁と経済産業省が検討した。
その結果、パソコンそのものの操作に関する知識や技術を教える行為と一体不可分でない限り、特定継続的役務には当たらないとの判断になった。経産省ではネットを通じてプログラミングの教育を提供する新しいサービスが創出され、優れたエンジニアの育成につながると期待している。
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日刊工業新聞2016年8月31日電機・電子部品・情報・通信面