「再生・細胞医療で経済のエンジンを回す神奈川モデルを」(黒岩知事)
川崎市の研究開発拠点がオープン、日本のハブに
自治体が持つビッグデータを活用
GEヘルスケアは、そんな地方自治体のひとつである青森県で自治体・大学と協働し、過疎地の新たな医療モデル構築を目指す『ヘルスプロモーションカー』を用いた新たな医療サービスの実証実験と、弘前COI研究推進機構でのビッグデータ解析による疾患予兆発見の仕組み構築、というふたつの共同プロジェクトを進めている。
ヘルスプロモーションカーは、超音波診断装置・心電計をはじめとした携帯可能な小型医療機器を4WD車に搭載し、従来の往診車では不可能だった病院・診療所と同等レベルの検査を目指すもの。保健師の地域活動や単身世帯への声かけ(安否確認)など多目的に使うこともでき、包括ケアの実現に活用されている。
GEヘルスケア・ジャパン マーケティング本部マーケティング戦略部の川端亮部長「搭載されている機器は、GE製に限らない。GEヘルスケアの役割は、地域の課題に対するテクノロジーや製品などインダストリー側からの提案のまとめ役となること。
専門知識を活かした“目利き”となって行政側と産業側を繋ぐことで、プロジェクト全体の効果・運用性を高めるのに貢献できる」と話す。また、「課題解決につながる新しい産業創出や活性化のために、当社が橋渡しをして地元企業と全国の大企業とのマッチングを図るといった動きも、徐々に成果を生み出しつつある」という。
もうひとつのプロジェクトは、弘前大学医学部が蓄積する過去10年にわたる地域住民の特定健診データをベースに、臨床医学の専門的な検査からライフスタイルに及ぶ多岐にわたる調査項目を加えた“ビッグデータ”をGEヘルスケア・ジャパンが解析する、というもの。
弘前大学の研究方針のもと、例えば腸内細菌と認知状態など、これまで関係性が見えなかったデータ同士の相関を見るなど、将来的な認知症発症の可能性を早期に予測するアルゴリズムを目指したデータ解析をしている。
「いくつかの相関関係は見つかり始めており、医学的な証明が得られれば、予防的な医療の提供にも繋げられるのではないかと期待している」と川端氏。GEヘルスケアは、すでに他の都市とも同様に“ビッグデータ”を医療に活かすための取り組みを推進している。
地方自治体や医療機関が保有する多様なデータを横断的に分析することで、健康福祉政策に活かせる可能性は決して小さくないだろう。いま、地域医療を最適化させるための中心的役割を担うのは、中央省庁から各地域の自治体へと移りつつある。
日刊工業新聞2016年28月25/26日