「再生・細胞医療で経済のエンジンを回す神奈川モデルを」(黒岩知事)
川崎市の研究開発拠点がオープン、日本のハブに
神奈川県は25日、川崎市川崎区に整備してきた再生・細胞医療の研究開発拠点「ライフイノベーションセンター」(LIC)の開所式を行った。黒岩祐治知事は「最先端医療と技術の追求により未病の改善と健康寿命を延ばすとともに、これをベースに経済のエンジンを回す神奈川モデルを発信していきたい」と意欲を示した。式典では関係者ら約200人が出席し、先端研究開発拠点の門出を祝った。
LICは再生・細胞医療分野の実用化や産業化に向け、研究開発や製造を行う施設。県、大和ハウス工業、東京センチュリーリースが整備し、一部の入居企業は稼働を始めた。
県は24日に総合設備工事のダイダン、臨床用ヒト胎盤・臍帯(さいたい)由来標準間葉系細胞の加工などを手がけるライフバンクジャパン(神戸市中央区)の入居決定を発表。入居企業・団体数は計20社・団体となり、全体の9割が決まった。
ダイダンは川崎市に再生医療分野向け空調システムのオープンラボを整備し、2017年春に稼働する。ラボにはiPS細胞(人工多能性幹細胞)など、各種細胞を培養・加工する施設(CPF)向けの空調システムを設置。大学や研究所、製薬会社などに安全でクリーンな実験環境を提供する。ラボの運営で大学や企業と連携を深め、再生医療分野での新規事業創出も狙う。
新設するオープンラボは、神奈川県が川崎市川崎区に建設した再生・細胞医療の産業化拠点「ライフイノベーションセンター」内に設置する。延べ床面積は約385平方メートル。一般的な設備に比べ、導入コストを最大40%削減可能なCPF向けクリーンルーム「エアバリアブース=イメージ」をラボ内に整備する。
同設備は空気の流れで壁をつくり、複数の細胞を扱っても個々の作業を干渉することなく異物の混流が防げる。開放部からブース外への一方向気流を形成し、エリア内のクリーン度を維持できる。各部屋を仕切る必要がないため、整備コストを抑えられる。
オープンラボでは、材料や試薬、装置メーカーなどに開発製品の評価の場を提供。細胞培養技術者を育成する場としても活用してもらう。
(「エアバリアブースのイメージ)
厚生労働省が先ごろ発表した「平成26年簡易生命表の概況」によれば、日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳で、それぞれ世界第1位、第3位。日本は世界トップクラスの長寿国だ。
これ自体は喜ばしいものの、長生きしても病気や不調と闘う期間が長くなれば、QoL(Quality of Life:生活の質)は大きく損なわれることになる。WHO(世界保健機関)が2000年に「健康寿命」という概念を提唱したことに続き、厚労省も健康寿命を『健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間』と定義づけ、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ小さくすることを目標に掲げている。
しかし、2001年と2010年の各寿命の推移をみると、図1のように男女ともその差(=問題を抱える時間)がむしろ長くなっていることがわかる。日本の高齢者たちは約10年もの長期にわたって介護が必要な状態が続いており、それに付随して介護者の金銭的負担や身体的・精神的負担が生じている現実。
平均寿命と健康寿命の差がもたらす負のインパクトは、社会にも大きくのしかかる。厚労省の推計では、社会保障費のうち医療給付費は、2012年度の35.1兆円から、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には54.0兆円に拡大すると指摘。介護給付金(19.8兆円)と合わせると社会保障給付費全体の49.5%を占め、年金(40.6%)を超える規模になると目されている。
実際、65歳以上の高齢者の一人当たりの年間国民医療費は65歳未満の約4倍という実態(2012年度)もあり、現役世代の負担を縮小するためにも、健康寿命の延伸は不可欠。病気になってから治すのではなく、病気にならないようにする「未病対策」が、今後ますます重要になる。
政府は、社会保障制度改革の医療・介護分野における柱として、「包括的マネジメント」、とりわけ「地域包括ケアシステムの推進」をうたっている。これは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供しようとするもの。認知症対策や医療・介護連携、プライマリ・ケア/在宅医療など、高齢者のケアを主眼としたモデルを構築する取り組みだ。
例えば、GEヘルスケア・ジャパンは、2010年から「Silver to Gold」を戦略に掲げ、超高齢社会特有のヘルスケア課題を解決するために、大きく3つの指針で活動を進めている。
そのひとつが、高齢社会に多い疾患にフォーカスし、その早期診断・早期治療を促す疾患領域別のアプローチ。二つ目は、増大する検査ニーズを効率的にこなしたり、画像診断装置の検査台を車いすからでも移動しやすい低いものにしたり、検査時間を短縮するなどで身体の負担を抑える“シルバー向け検査機器”の開発。
そして最後に、プライマリ・ケアの推進。これは、患者さんにもっとも近い医師が広範な疾病領域を総合的にカバーし、専門性を持つ医師・看護師・保健師・介護士などと連携して、地域コミュニティ住民の健康を継続的にモニターする仕組み。
“超高齢社会・日本”のなかでも最も高齢化が進行しているのは、若者が都市部へと流れてしまった地方都市。GEヘルスケアは近年、そうした地方自治体との協業で「地域版Silver to Goldモデル」の確立を目指してきた。
地方自治体の多くが、雇用創出につながる「産業創造」と高齢者ケアを中心とする「医療システムの革新」を重要課題に据えており、医療・介護を通じた経済活性化を志向する自治体が、今後も増えると予想される。
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LICは再生・細胞医療分野の実用化や産業化に向け、研究開発や製造を行う施設。県、大和ハウス工業、東京センチュリーリースが整備し、一部の入居企業は稼働を始めた。
県は24日に総合設備工事のダイダン、臨床用ヒト胎盤・臍帯(さいたい)由来標準間葉系細胞の加工などを手がけるライフバンクジャパン(神戸市中央区)の入居決定を発表。入居企業・団体数は計20社・団体となり、全体の9割が決まった。
ダイダンが空調システムのオープンラボ
ダイダンは川崎市に再生医療分野向け空調システムのオープンラボを整備し、2017年春に稼働する。ラボにはiPS細胞(人工多能性幹細胞)など、各種細胞を培養・加工する施設(CPF)向けの空調システムを設置。大学や研究所、製薬会社などに安全でクリーンな実験環境を提供する。ラボの運営で大学や企業と連携を深め、再生医療分野での新規事業創出も狙う。
新設するオープンラボは、神奈川県が川崎市川崎区に建設した再生・細胞医療の産業化拠点「ライフイノベーションセンター」内に設置する。延べ床面積は約385平方メートル。一般的な設備に比べ、導入コストを最大40%削減可能なCPF向けクリーンルーム「エアバリアブース=イメージ」をラボ内に整備する。
同設備は空気の流れで壁をつくり、複数の細胞を扱っても個々の作業を干渉することなく異物の混流が防げる。開放部からブース外への一方向気流を形成し、エリア内のクリーン度を維持できる。各部屋を仕切る必要がないため、整備コストを抑えられる。
オープンラボでは、材料や試薬、装置メーカーなどに開発製品の評価の場を提供。細胞培養技術者を育成する場としても活用してもらう。
(「エアバリアブースのイメージ)
地域医療を最適化し「健康寿命」を延ばす
GE Reports Japan2015年09月26日
厚生労働省が先ごろ発表した「平成26年簡易生命表の概況」によれば、日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳で、それぞれ世界第1位、第3位。日本は世界トップクラスの長寿国だ。
これ自体は喜ばしいものの、長生きしても病気や不調と闘う期間が長くなれば、QoL(Quality of Life:生活の質)は大きく損なわれることになる。WHO(世界保健機関)が2000年に「健康寿命」という概念を提唱したことに続き、厚労省も健康寿命を『健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間』と定義づけ、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ小さくすることを目標に掲げている。
しかし、2001年と2010年の各寿命の推移をみると、図1のように男女ともその差(=問題を抱える時間)がむしろ長くなっていることがわかる。日本の高齢者たちは約10年もの長期にわたって介護が必要な状態が続いており、それに付随して介護者の金銭的負担や身体的・精神的負担が生じている現実。
社会にも大きな負担
平均寿命と健康寿命の差がもたらす負のインパクトは、社会にも大きくのしかかる。厚労省の推計では、社会保障費のうち医療給付費は、2012年度の35.1兆円から、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には54.0兆円に拡大すると指摘。介護給付金(19.8兆円)と合わせると社会保障給付費全体の49.5%を占め、年金(40.6%)を超える規模になると目されている。
実際、65歳以上の高齢者の一人当たりの年間国民医療費は65歳未満の約4倍という実態(2012年度)もあり、現役世代の負担を縮小するためにも、健康寿命の延伸は不可欠。病気になってから治すのではなく、病気にならないようにする「未病対策」が、今後ますます重要になる。
地域包括医療の重要性
政府は、社会保障制度改革の医療・介護分野における柱として、「包括的マネジメント」、とりわけ「地域包括ケアシステムの推進」をうたっている。これは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供しようとするもの。認知症対策や医療・介護連携、プライマリ・ケア/在宅医療など、高齢者のケアを主眼としたモデルを構築する取り組みだ。
例えば、GEヘルスケア・ジャパンは、2010年から「Silver to Gold」を戦略に掲げ、超高齢社会特有のヘルスケア課題を解決するために、大きく3つの指針で活動を進めている。
そのひとつが、高齢社会に多い疾患にフォーカスし、その早期診断・早期治療を促す疾患領域別のアプローチ。二つ目は、増大する検査ニーズを効率的にこなしたり、画像診断装置の検査台を車いすからでも移動しやすい低いものにしたり、検査時間を短縮するなどで身体の負担を抑える“シルバー向け検査機器”の開発。
そして最後に、プライマリ・ケアの推進。これは、患者さんにもっとも近い医師が広範な疾病領域を総合的にカバーし、専門性を持つ医師・看護師・保健師・介護士などと連携して、地域コミュニティ住民の健康を継続的にモニターする仕組み。
“超高齢社会・日本”のなかでも最も高齢化が進行しているのは、若者が都市部へと流れてしまった地方都市。GEヘルスケアは近年、そうした地方自治体との協業で「地域版Silver to Goldモデル」の確立を目指してきた。
地方自治体の多くが、雇用創出につながる「産業創造」と高齢者ケアを中心とする「医療システムの革新」を重要課題に据えており、医療・介護を通じた経済活性化を志向する自治体が、今後も増えると予想される。
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日刊工業新聞2016年28月25/26日