高級ホテル開業ラッシュ!都心舞台に競争激化 訪日外国人がターゲット
世界に進出するためのショールーム
一方、「和」を押し出すのは星野リゾート。同社が都内で初めて運営する星のや東京は、東京のど真ん中で地下1500メートルからくみ上げた天然温泉の露天風呂が楽しめる。建物は地下2階、地上17階建てで、コンセプトは「塔の日本旅館」。ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町とは対照的に、84の客室は日本旅館であることにこだわり、畳の間や竹素材のクローゼットなど、和のテイストをふんだんに盛り込んでいる。
<星のや東京。建物は地下2階、地上17階建てで、コンセプトは「塔の日本旅館」>
星野リゾートの星野佳路社長は星のや東京を「世界に進出するためのショールーム」と表現する。世界のビジネスパーソンが集まる大手町に、最高級の趣向を凝らした日本旅館を置くことで、投資家などにアピールするのが目的の一つだ。
力量をアピールする絶好の立地
同社は、あくまでホテルの運営会社であり、土地や建物などの不動産を保有していない。星のや東京も土地や建物の所有者は三菱地所だ。都心の一等地にある星のや東京は、運営会社としての力量を世界にアピールするには、絶好の立地と言える。星野社長は「星のや東京は、日本旅館が世界に出られるかというステップの場所であり、ここで勝てなければ、世界には進出できない」と、その重要性を強調する。
星のや東京は靴を脱いで玄関を上がると、畳敷きの廊下が続く。館内ではオリジナルの浴衣を着て過ごし、宿泊客以外は入れない。日本旅館ならではのプライベートな滞在が特徴。一方で「快適性、機能性で西洋型のホテルに負けていないことが大事」とし、西洋型のホテルの機能性や利便性も、設備やサービスに取り入れている。
<星のや東京の客室。日本旅館ならではのプライベートな滞在が特徴>
ただ、設備やサービスの質は「あくまで日本人に受け入れられることが大事」と強調する。日本人を重視することで、日本旅館としての設備やサービスの質を高め、それを外国人にアピールする狙いだ。
観光都市・東京の発展に貢献
ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町と星のや東京はコンセプトこそ異なるが、訪日外国人がターゲットという点で共通している。相次ぐ高級ホテルの開業に対し、西武HDの後藤高志社長は「競争と協調で互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、東京を観光都市として発展させていきたい」と話す。
20年には三井不動産が開発する東京・大手町の三井物産本社跡地に、カナダのフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツの進出が決定している。星野リゾートとアマンがにらみ合う大手町に、フォーシーズンズもやってくることになる。東京が世界有数の観光都市として成熟を目指す中、都心を舞台とした高級ホテルの競争はさらに過熱しそうだ。
日刊工業新聞社2016年8月19日生活面