ニッポンの車載電池はこれから化学・材料メーカーがけん引する

日産が車載電池から撤退報道

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ゴーン社長、右上はトヨタの新型プリウス用リチウムイオン電池、右下は車載用セパレーター

宇部興産、20年めど年産能力2倍へ


日刊工業新聞2016年4月13日


 宇部興産は2018年度までに、リチウムイオン二次電池(LIB)部材の売上高を300億円強に引き上げる。セパレーター(絶縁材)は主要な電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)に搭載したLIBに採用されており、20年をめどに年産能力を現状比2倍の3億平方メートルに増強する。電解液では技術革新とコスト削減に取り組み、中国や欧米の車載電池の需要増を取り込む。

 日立マクセルとの合弁会社、宇部マクセル(京都府大山崎町)の高機能塗布型セパレーターがトヨタ自動車の新型HV「プリウス」に搭載したLIBに採用された。宇部興産のセパレーターに日立マクセルの分散塗布技術を用いてコーティング膜を形成することで高温耐熱性を強化。電池が高温になった際の挙動安定性、高入出力特性が評価された。

 今後も需要増が見込めるため、7月に宇部ケミカル工場(山口県宇部市)、17年6月に堺工場(堺市西区)のセパレーター生産能力を増強し、17年に現状比4割増の2億平方メートルにする。

 電解液は車載向けで出遅れたが、材料や製法を見直すコストダウンを進める。電解液原料となる炭酸ジメチル(DMC)などのライセンス供与で、26年までに100億円以上の売り上げを目指す。DMCは中国の肥料メーカー、中塩紅四方(安徽省合肥市)へのライセンス供与を決めた。今後は車載用LIBの需要増が見込める北中米でのライセンス供与を見込む。

 堺工場では7月にセパレーターと電解液などの研究開発拠点「大阪研究開発センター」が完成する。堺工場はセパレーター、電解液を生産し、電池大手の拠点にも近い。生産現場や顧客との連携強化で、LIB部材の新製品開発を強化する。

 調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめた次世代環境自動車向けの大型二次電池の世界市場は25年に6兆3649億円と、14年比10・2倍になる見通し。

 地域別では、EVの生産が急拡大した中国が同11・6倍の1兆6164億円になると予測。北・中南米(同10・7倍の2兆149億円)、欧州(同17・7倍の1兆8328億円)でも大幅な需要増が見込めるとした。

 この需要増を取り込むべく、米テスラモーターズはネバダ州で新電池工場「ギガファクトリー」を年内に稼働する予定。中国の電池自動車メーカー、比亜迪(BYD)は山西省太原市にEV新工場を建設するほか、パナソニックは中国・大連市の工場を 12月に完成させる方針。

 セパレーターでも、旭化成が車載用に使う乾式セパレーターに強い米ポリポアを約2600億円で買収した。住友化学は韓国で17年度に新工場を建設し、年産能力を20年に4億平方メートル超と15年比3倍以上に引き上げるなど、日系メーカーで生産能力の増強が相次いでいる。

JNC、車載用リチウム電池の主要3部材に参入


日刊工業新聞2016年4月18日


 JNCは車載用リチウムイオン二次電池(LIB)向け3部材の開発・事業化にめどを付けた。2020年以降の搭載を目指す。今夏までにドイツ化学メーカーと開発した正極材を投入する。秋にはLIBやリチウムイオンキャパシター(LIC)向けに、セパレーターの量産設備を本格稼働する。さらに17年に負極材のパイロットプラントを立ち上げる。当面は国内生産を想定するが、中国などでの生産も検討する。

 LIBの主要4部材のうち、電解液を除く3材料に参入する。JNCは10年に、独H・C・スタルクと合弁会社「CSエナジーマテリアルズ」を設立。このほど大容量で寿命特性に優れ、ガスの発生も抑えられるニッケル酸リチウム(NCA)正極材を完成した。ラミネート型、角型の両方に対応。8月にサンプル供給を始め、年内にも特性を上げた材料を仕上げる。

 正極材は12年に水俣製造所(熊本県水俣市)でパイロットプラントが始動。量産時は中国などに生産を移し、コストを抑える。

 一方、セパレーターは15年に市原製造所(千葉県市原市)に設けた量産プラントで本格生産に乗り出す。足元ではLIBのほかLIC向けの需要増も期待でき、今秋にも稼働率を50%程度まで引き上げる。宇宙産業用途への採用も模索する。

 また、シリコン系負極材はフランス原子力庁(CEA)新エネルギー技術研究部門(LITEN)と進めてきた研究開発が一段落したのを受け、17年にも市原製造所にパイロットプラントを設け事業化を急ぐ。

 3部材とも供給能力より技術的な優位性を訴求する。電池各社から電気自動車(EV)大手といった需要家までつながる「強固な“ファミリー”」(担当者)の形成を目指す。
 

大同メタル、電極シートの年産能力倍増


日刊工業新聞2016年2月18日


 大同メタル工業は2016年内に、車載用などのリチウムイオン二次電池に用いる電極シートの年産能力を現状比2倍の240万メートルに引き上げる。15年半ばから犬山事業所(愛知県犬山市)で量産を始めており、活性炭を高密度に集積する技術などで競合製品に比べ蓄電能力が20%程度向上する性能を訴求して採用拡大を狙う。投資額は2億―3億円。同電池搭載車の普及も見据え、早期に売上高10億円を目指す。

 生産能力を増強する電極シートは「デルエコー」という名称で展開し、リチウムイオン二次電池やキャパシターの正・負極などに用いる。アルミ箔(はく)に活性炭を接着する構造で、主力の自動車エンジン用すべり軸受で培った技術を応用して高密度・高精度に仕上げた。

 活性炭層の厚さは60マイクロメートル(マイクロは100万分の1)、幅は45ミリ―300ミリメートルなどを標準寸法とし、顧客の要望に柔軟に応える。価格は競合製品と同等にした。

 犬山事業所ではすでに約5億円を投じ、クリーンルームや活性炭の製造設備、アルミ箔への接着設備などを整えた。現在は年産能力120万メートルで、年内に新たに設備を追加して年産能力を倍増する。複数の電池メーカーに供給しており、受注拡大に向けて積極的に働きかける。

 エンジン向け以外の領域を開拓する新規事業の一環。スマートメーター用やドライブレコーダー用、再生可能エネルギー用の電源などへの搭載を想定するほか、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及による同電池の需要拡大を見越して提案する。

(リチウムイオン二次電池用電極シート「デルエコー」)

三菱化学、熱伝導率2倍の放熱部材


日刊工業新聞2016年2月18日


 三菱化学は電力用半導体素子(パワーデバイス)が発する熱を効果的に逃がす放熱部材で、既存品に比べて熱伝導率を2倍にした絶縁樹脂複合材を開発した。熱硬化性樹脂に独自の3次元連結構造を持つ六方晶窒化ホウ素(h―BN)を配合することで、熱伝導率を15―20ワット/メートル・ケルビンに高めた。車載電池メーカー向けなどに提案し、年内のサンプル出荷を見込む。

 三菱化学はホウ素と窒素の化合物であるh―BNを、「カードハウス構造」と呼ぶ独自の3次元連結構造で球状の凝集体にした。既存品は鱗片状のh−BN一次粒子を貼り付けているため、圧力に弱くはがれやすかった。新製品は3次元で同粒子を結合する。凝集粒子表面の配向も高度に制御できたため、形状を保持しやすく、接触熱抵抗を大幅に減らせたという。

 放熱性を高めつつ小型化・軽量化できる利点を生かし、電気自動車(EV)向けバッテリーやモーターコンバーター、産業機器用パワーデバイス、太陽光・風力発電システムのパワーコンディショナー(電力変換装置)などへの採用を目指す。価格は既存の絶縁樹脂複合材と同等とする方針。

 調査会社の富士経済(東京都中央区)によると、2014年の熱制御・放熱部材の世界市場規模は約2000億円。EVの普及、電子・電気機器の高性能化を背景に年6%の成長が見込め、18年に約2600億円規模へ成長する見通し。これら旺盛な需要を取り込むため、三菱化学は18年度までに本格出荷を目指す。

(独自の3次元連結構造を持つ窒化ホウ素粒子表面の拡大図)

住友金属鉱山、ニッケル酸リチウム増産


日刊工業新聞2016年2月9日


 住友金属鉱山は2016―18年度の3年間に、材料事業の設備投資額を500億円以上にする。銅やニッケルなど金属価格の下落で、”上流“の鉱山開発を主体とした資源事業の収益が悪化する中、”下流“の材料事業に積極投資し収益を下支えする。

 車載バッテリー向け電池材料、情報端末向け結晶材料を強化。電池材料のうち、テスラモーターズなどの電気自動車(EV)向けバッテリーに使われるニッケル酸リチウムは、もう一段の増産投資に踏み込む方針。

住友大阪セメント、リン酸鉄リチウムでベトナムに新工場


日刊工業新聞2016年1月29日


 住友大阪セメントは28日、リン酸鉄リチウム(LFP)を生産するベトナム工場の設備を増強し、生産能力を現在の2倍に当たる年2000トンに引き上げると正式発表した。リチウムイオン電池の正極材料としての需要拡大に対応する。投資金額は約17億円。2017年2月に稼働する。

 既存建屋内の増設スペースに上工程ラインを追加設置する。下工程ラインはすでに年産2000トンの能力を保有しており、すみやかな増産が可能になる。

 同社は12年12月にLFPの生産工場をベトナム・フンイエン省に設置。生産開始当初は定置式蓄電池向けがメーンだったが、15年ごろから車載向けにも用途が広がり、工場はフル生産が続いている。直近も複数メーカーから引き合いを受けており、増産を決めた。

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

一部報道で日産が車載電池事業を売却する意向という。特にサプライズはない。自社のEV用を外部調達に切り替えるなど昨年からそのような兆しが顕在化していた。日産はカルソニックカンセイの株式売却など競争力の源泉を再構築している。車載電池のセットがコモディティー化する一方、日系の材料関係メーカーの動きは活溌。今年に入ってからの主要記事だけでもこれだけある。ディスプレーにおける材料、スマホにおける電子部品などと同じ流れだろう。

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