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中国・鉄鋼業、ようやく構造調整か。それでも不信感がぬぐえない

欧米VS中国、日本は対立の巻き添えも

5年で1億5000万トンの能力削減


 「少なくとも今年は(中国メーカーが)赤字になったところで、市況悪化にブレーキがかかる。15年10―12月のような陥没価格にはならない。価格メカニズムが働いている」。東京製鉄の今村常務は現在の中国市場をポジティブにとらえる。

 5月上旬に急降下した中国の鋼材市況は足元で再び反転。これを受け、「7月には当社の輸出も底入れした。8月商談は先月より(鋼材1トン当たり)10ドル程度上がってほぼ終わった」(今村常務)と表情を緩める。

 その背景の一つには、粗鋼生産量で世界5位(中国で2位)の宝鋼集団と、同じく11位(同6位)の武鋼集団の統合計画が公表され、いよいよ構造調整へ向け本格的な再編に動きだしたことへの期待感がある。

 両社はそれぞれ最新鋭の大型製鉄所を立ち上げつつあるが、「武鋼の新しい防城港製鉄所(広西チワン族自治区)は高炉の建設をやめて、下工程だけになるようだ」(経産省関係者)と、合理化の具体的な話も出てきた。

 中国政府は今後5年で最大1億5000万トンの能力削減を決めているが、6月下旬には国家発展改革委員会が16年の削減量を4500万トンと明示。焦点の雇用問題でも18万人を配置転換させるとしており、同委員会の徐紹史主任は「目標達成を強く確信している」と断言した。


足元では逆行するような数字が相次ぐ


 だが、同時にネガティブな指標も明らかになった。まず、6月の1日当たり粗鋼生産量が過去最高を更新。政府支出による大型公共工事の拡大で鋼材需要が膨らんだ上、6月に市況が下げ止まり、「この水準なら、利益が出ると判断した製鉄所が稼働率を高めたのではないか」(国内の鉄鋼関係者)と見ている。

 さらに、6月の鋼材輸出量も約1094万トンと半年ぶりに1000万トンを超え、15年9月に次ぐ過去2番目の高水準に達した。16年は年初こそ前年をやや下回っていたが、結局1―6月累計は前年同期を約9%上回り、1―6月の過去最高を更新した。能力削減に向けた道筋が見えてきたと同時に、足元ではこれに逆行するような数字が相次いでいる。

 神戸製鋼所の川崎博也社長は宝鋼と武鋼の統合を「かつて日本がたどった道であり、ポジティブな動きだ」と評価しつつも、日本へのプラスの影響については「かなり先になる。能力と需要のギャップがどういう時間軸で縮まっていくのかが重要だ」と冷静に分析する。

 しかも現地では「不確定要素が多く、年内の両社の統合が不透明になってきた」との報道が流れるなど、ややトーンダウンしてきた。4月をピークとする市況の高騰は投機資金の思惑買いによるものもあっただけに、中国市場にはそもそもムードに流されやすいという下地がある。

 足元で回復に転じた市況が再び悪化する恐れはないのか。東鉄の今村常務は「そのリスクはある。4月のようなことが起きると反動減は起こり得る。中国政府が生産を完璧にコントロールできるかどうか分からない」と不安を口にする。

 以前から業界関係者は「中国市況は上げと下げを繰り返しながら徐々に回復に向かう」と口をそろえていた。そのわずかな上下変動も大きなうねりとなり、日本を揺さぶることになる。
(文=大橋修)
日刊工業新聞2016年7月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
中国全体をみると、構造改革は動き始めている。2015年のGDPに占める消費の割合は5割を超えた。かつては投資と輸出で7割を占めていた。雇用創出力の高いサービス産業が伸び年間1300万人の新規就労者に職を与えていると言われている。ただ供給改革一気に進めると、失業者が増え社会の不安定要因になる。地方の抵抗が強く、競争原理にのっとった市場の力で淘汰を進めるのだろう。今のスピードは日本企業にとっては遅いが、我慢強く待つしかない。

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