トリリオン・センサー時代に日本の半導体産業は巻き返し可能か
研究成果の論文発表でも存在感薄れる。米国企業が先導、アジア勢も追い上げ
日本の研究開発の実力は?
日本の半導体の研究開発の実力はどの程度なのか。VLSIシンポジウムは、論文の採択率が20―40%程度と“狭き門”で有名だ。優れた論文しか発表できないことから、採択数が国の研究開発力の一つの指標になる。
16年の回路技術の日本の採択数は12件で世界2位。だが、採択数で全体の過半を占める米国(49件)との差は近年、開く一方だ。韓国は9件、台湾も7件とアジア勢が追い上げる。
一方、デバイス技術でも米国が24件と独走し、ベルギーの13件がこれに続く。日本は12件で台湾とともに3位。日本の存在感は年々、薄らいでいる。
世界の半導体市場は伸長しているが、これをけん引するのは米企業だ。日本企業の売上高は長く横ばい傾向が続き、その結果、シェアは下降の一途をたどっている。00年以降は韓国や台湾の企業が急成長し、停滞していた日本に追いついた。
VLSIシンポジウム委員長を務める慶応義塾大学の黒田忠広教授は、「伸び続ける世界の半導体市場と、一方で伸び悩む日本。クリアコントラスト(明確な対照関係)だ」と現状を憂慮する。
だが、IoT時代に日本が巻き返せる可能性はある。30年以降は、トリリオン・センサー(1兆個のセンサー)が社会にちりばめられる。大量のセンサーに加えて、家電やロボット、自動車、AIがつながり、あらゆるモノと情報が結びつくようになる。そのすべてのIoTデバイスに半導体が搭載されるからだ。日本の製造業のIoT化は、低消費電力で高性能な半導体に委ねられていると言っても過言ではない。
(文=藤木信穂)
日刊工業新聞2016年6月14日 深層断面