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「生活のデバイスに」…JR東日本が機能拡充、「Suica」進化への道筋

「生活のデバイスに」…JR東日本が機能拡充、「Suica」進化への道筋

スイカを「移動のデバイス」から「生活のデバイス」に変革する(モバイルスイカ)

JR東日本は交通系ICカード「Suica(スイカ)」の機能を2034年までに段階的に拡充する。26年にはモバイルスイカのアプリケーションによるコード決済機能を付加するほか、28年にはセンターサーバー化により、利用状況などに応じて割引クーポンなどを個別に発行。34年までに自動改札機をタッチレスで通過できる「ウォークスルー改札」や事前のチャージ不要の後払いなどの実現も目指す。(高屋優理)

喜勢陽一社長は「スイカは移動のデバイスという今までの当たり前を超え、生活のデバイスに生まれ変わる」とスイカの抜本改革に意欲を示した。34年までに実現を目指すウォークスルー改札は、モバイルスイカの位置情報をセンターサーバーで管理することで、タッチレスで改札を通過する仕組み。またこのセンターサーバー化により、スイカをクレジットカードや銀行口座とひも付け、チャージ不要の後払いも実現する。

まず、26年秋をめどに、モバイルスイカアプリを大幅リニューアル。コード決済機能により、スイカの上限額の2万円を超える決済や、個人間送金ができるようにする。28年にはセンターサーバー化により新たに「スイカアプリ」を導入。サブスクリプション(定額制)型の料金設定の鉄道チケットを提供し、利用状況などに応じてクーポンを発行するなど、顧客の囲い込みにつなげる。

タッチレスで通過するウォークスルー改札の実現を目指す(現在の改札)

また、27年春をめどに首都圏と仙台、新潟、盛岡、青森、秋田のスイカエリアを統合。これにより、スイカで上野から仙台まで常磐線を利用できる。スイカの未導入エリアでも、スマートフォンで定期券を購入し、画面表示などで改札を通過できるようにする。さらに、ウォークスルー改札の実現によって、将来的には、JR東日本全線でスイカの利用を可能にする。

このほか、地域に根差した新たなスイカ「ご当地スイカ」を開発。マイナンバーカードとスイカアプリの連携により、地域内の生活コンテンツやデマンドバスの利用、商品券や給付金受け取りなど行政サービスを利用できる。スイカを通じ、地域が抱える課題の解決を目指す。インバウンド(訪日外国人)向けには25年3月から「Welcome Suica Mobile」を提供。日本入国前にアプリのダウンロードやチャージができる。

JR東日本ではスイカサービスをセンターサーバー化することで、共通プラットフォーム(基盤)として構築し、他の交通事業者に提供。システム導入や更新時のコスト低減などにつなげる。また、将来的には、海外への展開も視野に入れ、開発を進めていく。

日刊工業新聞 2024年12月12日

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