日本のイノベーション、世界の期待はここに!
「GEグローバル・イノベーション・バロメーター2016」調査結果より
米GE最高デジタル責任者インタビュー
日刊工業新聞2016年4月20日
米ゼネラル・エレクトリック(GE)のデジタル部門を統括するビル・ルーシニアバイスプレジデント兼最高デジタル責任者(CDO)は日刊工業新聞とのインタビューに応じ、製造業のモノのインターネット(IoT)活用で「日立製作所や三菱電機などとの提携も選択肢」と日本企業に連携を呼びかけた。GEは産業用IoTの基本ソフト(OS)「プレディックス」の魅力向上のため提携戦略を推し進めている。産業向けIoTで先行するGEと、競争と協調のバランスをどうとっていくか日本企業の課題となる。
―GEのIoT戦略のポイントは。
「プレディックスというプラットフォーム(基盤)と、その上で運用するアプリ(応用ソフト)をセット提供する。生産設備などをネットワーク接続しデータを収集・分析することで効率化を図れる。プレディックスの顧客企業がアプリを自社開発し、それを別の企業に販売することも可能だ。新たなビジネス機会の提供という点にも注目してほしい」
―日本企業のプレディックスに対する引き合い状況は。
「GEは3年前から日本市場に注目してきた。中でも最大顧客層は大手製造業だ。だんだん(営業の)成果が見えるようになってきた。ビッグチャンスを感じている」
―日本での拡販に向けた課題は。
「日本企業はテクノロジーへの関心が非常に高い半面、リスクに敏感。プレディックス導入がプラスに働くことをしっかり説明していく。また生産設備を接続して生産性を上げるという取り組みは、多様な業界の企業が関わらないと成果を上げられない。GE1社では何もできないので、提携戦略が重要だ。現状、日本ではソフトバンクや東芝がパートナー。今回の日本出張でもいろいろな企業を訪問しており、今後、新しい相手をご報告できるだろう」
―プレディックスの競合状況は。
「アプリ分野では競争が起きるだろう。例えばGEが、風力発電設備で競合する独シーメンスの設備を効率化するためのアプリを提供することもできるからだ。一方、プラットフォームという点においてプレディックスはクラウド活用でグローバル展開できる点で先行しており、今後、激しい競争は起きないと考えている」
―本当にプラットフォームの競争は起きませんか。
「新たに産業用IoTプラットフォームを構築しようとするとすると軽くビリオン(10億)ドルはかかる。それをグローバル展開するにはさらに莫大(ばくだい)な予算が必要になる。今から参入するのは現実的でないのではないか。またIT企業は実際のモノづくりの現場経験がなく、この点でもGEが優位だ」
「日立や三菱電機には、莫大な投資をしてGEと戦う選択肢はあるだろう。一方、GEと提携しプレディックス対応アプリでビジネスを拡大していく選択肢もある。私としては後者に大きなビジネスチャンスを感じている」
84年カリフォルニア州立大コンピュータサイエンス修士号取得。米シスコでバイスプレジデント、独ソフトウェアAGで最高技術責任者(CTO)やシニアバイスプレジデントを歴任し、11年GE入社。15年9月から現職。米オクラホマ州出身、54歳。>
【記者の目?基盤巡り覇権争い本格化】
他社に先駆けてプレディックスを開発し、外販を始めたGE。先頭を走ってきただけに、ビル・ルー氏の発言からは産業向けIoTでトップに立つことへの自信が感じられた。一方、日本でも日立が16年度からの3年間で産業向けIoT基盤の構築に約1000億円を投じると発表した。同基盤を巡る覇権争いが本格化する。
(聞き手=後藤信之)