せん断強度30㎫…産総研と旭化成が開発、ミドリムシから高強度接着剤
産業技術総合研究所の芝上基成キャリアリサーチャーらと旭化成は共同で、ミドリムシ由来の原料をベースとした高強度な接着剤を開発した。せん断強度30メガパスカル(メガは100万)を持ち、自動車構造材料の接着剤としても使える。部材同士を剥がしやすい易解体性もあり、部品のリサイクルや再利用の促進にも貢献できる。
接着剤はミドリムシ由来の多糖類「パラミロン」に、脂肪酸を化学合成して作る。熱を加えて溶かして使うホットメルト接着剤で、アルミニウムや鉄、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の表面の凹凸に食い込むことで固定される。接着時と同じく熱を加えて、簡単に分解もできる。
現在産業用接着剤では、石油由来のエポキシ系接着剤が普及している。循環型社会の実現を目指して生物由来材料の高強度な接着剤を目指していた。ミドリムシは二酸化炭素(CO2)と糖を吸収してパラミロンを作り出すほか、培養が簡単で大量の生産と供給ができる可能性を持つことから、研究対象として注目した。
また自動車業界では、使用済み自動車(ELV)の資源循環が注目されている。車体の軽量化傾向の中で接着剤が多用される。産総研の寺崎正研究チーム長は「これまで高い接着力と易解体性を併せ持つ接着剤がなかった」とミドリムシ接着剤の効果を強調する。
加熱による接着面の再利用もできる。今後は、より放熱性を高めて電子機器向けの利用可能性も検討を進める。(水戸)
日刊工業新聞 2024年12月06日