ニュースイッチ

需給ギャップ悪化に拍車…動き始めた「石化再編」の行方

需給ギャップ悪化に拍車…動き始めた「石化再編」の行方

石化各社の再編に向けた検討が活発化している(旭化成の水島製造所)

化学業界は2024年、石油化学事業の再編に向けて大きく動き始めた1年となった。背景には業界の需給環境の変化がある。需要面では中国経済の低迷に加え、国内も物価高などで消費が振るわない。一方、特に大きな影響を与えているのが供給面だ。中国を中心としたプラントの新増設による供給過剰の状態が続き、需給ギャップの悪化に拍車をかけている。

影響が顕在化しているのが、化学製品の基礎原料となるエチレンだ。石油化学工業協会(石化協)の統計によると、国内のエチレン製造プラントの稼働率は24年10月実績まで、好不況の目安となる90%を27カ月連続で割り込んだ。石化協が正確なデータを持つ期間において過去最長を更新した。石化協の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「(稼働率)80%台は定常状態になりかねない」と度々語っており、新たな対策の重要性が増している。

脱炭素対応も、化学業界が持続可能な産業を実現するために欠かせない取り組みだ。日本の石化各社は脱炭素対応や生産最適化に向けた検討を本格化し、エチレン設備については方向性が見え始めてきた。

出光興産は27年度に千葉県の設備を停止し、三井化学の設備に集約する方針。丸善石油化学も早ければ26年度に、千葉県の設備を住友化学と共同出資する京葉エチレン(東京都中央区)の設備に集約する想定で検討している。

西日本でエチレン設備を持つ三菱ケミカルグループと旭化成、三井化学は、3社連携を模索する。3社出資による共同事業体の設立を前提とし、取り組みの方向性を24年度内に示す考えだ。

一方、レゾナック・ホールディングス(HD)は25年1月に石化事業を分社化し、その一部株式(20%未満)を保有して上場を目指す「パーシャルスピンオフ」の実施を検討する。25年は各施策の進捗(しんちょく)とともに、石化業界の次世代の姿をどう描くのかが、より明確になりそうだ。

日刊工業新聞 2024年12月5日

編集部のおすすめ