「車載アンテナ」理想の形を求めて…ヨコオが生かすAIの効果
ヨコオは車載アンテナを顧客の求める理想の形に設計するために人工知能(AI)を用いる。従来、人が最適な形状を探していたが、長さなどの組み合わせが膨大で時間を要することが課題だった。AIの利用で複数の答えを得られるため、顧客の満足度向上にも寄与する。設計にAIを使うだけでなく、業務の効率化を目的に生成AIの活用も促す。製造現場に限らず幅広い部門でAIの利用を後押しする。
ヨコオが製造現場でAIを活用し始めたのは2020年ごろからだ。顧客の要求に応えるためには、複数の組み合わせから最適な答えを見つける必要がある。経験者と新人では探索に要する時間に差があることや「人間だとたどり着けない形状を見つけ出せる」(技術本部先行技術開発部の広木星也氏)ため、AIの導入を決めた。
具体的には、最適解を見つけるために設計者を支援するツール「モードフロンティア」を用いてアンテナの形状を設計する。モードフロンティアは条件を変えながら、膨大な計算をして最適解を導くツール。例えばアンテナの隙間の大きさのほか、長さを条件として調整しながら使う。
人では1個しか解を得られなかった場合でも、同ツールにより同じ時間で45個の解を発見できた例もある。一部のアンテナでは同ツールを使い、実際に製品化した。従来よりも多くの解を顧客に提示できることで「顧客にとっても納得感が出てくる」(坂田毅執行役員常務)と効果を実感する。社内での普及を図るため、同ツールへの理解促進が今後の課題だ。
このほか群馬大学との共同研究を通じて、回路の自動設計にAIを適用する取り組みも実施。AIの活用は多岐にわたる。ただ、AI利用は製造現場にとどまらない。全社員を対象に生成AIの利用を促すための組織も立ち上げた。米マイクロソフト(MS)の生成AI「コパイロット」を使うため300ライセンスを取得した。
外部講師を招いた勉強会を開き、コパイロットの活用法を学ぶ機会も提供している。営業職から技術職まで約220人が利用中。会議の内容を要約したり、参加者の発言を翻訳したりするのに使っている。
コパイロットを活用中の100人を対象に調査した結果、全体で業務時間を1カ月当たり870時間程度削減できた。今後も「全社展開に向けて進めていく」(情報システム部の鈴木毅データ活用推進課長)と意気込み、AIを使いこなせる社員を増やす。