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細るバイク需要。国内40万台割れの衝撃

日本のライダーのこころをつかめるか
細るバイク需要。国内40万台割れの衝撃

川崎重工業の「Z250SL」(右上)とヤマハ発動機の「トリシティ155」


原付きスクーター市場よ再び


 バイクの国内需要が40万台目前となるまで縮小した主な要因は、排気量50ccの原付きスクーターの減少にある。通学や通勤、買い物など生活に必要な移動向けのコミューターと呼ばれる種類だ。高校生の通学利用が減った上、高齢化で免許返納者が増えてきた。

 需要縮小に対し、各社が手をこまねいていたわけではない。ホンダは2014年に50cc級で久しぶりの新モデル「ダンク」を発売し、15年には20―30代女性向けモデル「ジョルノ」を刷新。ヤマハ発動機も「他社にない若い人が好むカラーリングにこだわっている」(ヤマハ発動機販売の井下茂一営業統括部MC営業企画部長)と若年層に訴求している。

 規制が市場活性化を阻んでいるという見方もある。ホンダモーターサイクルジャパン(東京都北区)の加藤千明社長は、「昔よりバイクもインフラもずっと良くなったのに規制は変わっていない」と疑問を呈する。例えば、車との混合交通で制限速度が時速30キロメートルの50ccバイクが走るのは危険もある。

4輪車付帯免許の規制緩和を


 また世界的には4輪車付帯免許で50ccバイクに乗る日本は珍しく、欧州やアジアでは付帯免許で125ccまで乗れる。「数年無事故・無違反なら付帯範囲を広げることなども検討してほしい」(加藤社長)。125ccになれば機種の幅が広がり、裾野拡大が期待できる。

 バイク業界には、高校生に対する「免許を取らせない、買わせない、運転させない」の三ない運動にあまり対抗せず、若者のバイク離れを加速させた苦い経験がある。バイク離れは交通ルールを学ぶ機会も奪った。

 かつて若者は自転車の次に50ccスクーター、オートバイ、4輪車へとステップアップしたため、50ccの減少は車離れにも影響する。最近、経営トップらが積極的に声をあげるのも、4輪の入り口がなくなることへの危機感のあらわれだ。

 ヤマハ発動機は、コミューター利用と同時に週末はツーリングもできる125ccクラスを入門機の一つに位置づける。新たに提案中の前2輪・後1輪の「トリシティ」も125ccだ。「125ccはバイク免許を取るアクションが必要だからこそ将来の大型機ユーザーとなる可能性が高い」(井下ヤマハ発動機販売部長)。

 ヤマハ発は学祭などの大学関連イベントで、大学生が企画したバイクのプロモーションを展開した。「学生に気付かされることは多い。今は売るだけではダメだ」(同)。各社はバイクに乗らない若者への訴求に力を入れ、ホンダは高校の交通教育に協力する。

 国内市場が盛り返すためには、モノを良くするだけでなく、関係機関やユーザーと協力し、バイクを楽しむための環境整備やコトづくりが求められている。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年2016年4月15日/18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
少し前にヤマハ発動機が大島優子さんを広告塔に起用したことが思い出されます。バイクメーカーも手をこまねいているわけではないのでしょうが、市場全体では厳しい需要見通しですね。

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