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細るバイク需要。国内40万台割れの衝撃

日本のライダーのこころをつかめるか
細るバイク需要。国内40万台割れの衝撃

川崎重工業の「Z250SL」(右上)とヤマハ発動機の「トリシティ155」

2016年度の国内バイク市場がついに40万台割れ―。3月半ばに日本自動車工業会(自工会)が発表した見通しに、国内各社は「厳しい数字」と一様に苦い表情を浮かべる。大型バイクの復調だけが明るい兆しだ。市場回復を目指し、大型車に乗るバイク好きを増やしながら、いかに小排気量帯でライダーのすそ野を広げるか。各社が知恵を絞る。

 16年度の内需見通し39万2000台(前期比2・7%減)に、カワサキモータースジャパン(兵庫県明石市)の清水泰博取締役は「現状から予想されるままの数字」と語る。記録の残る70年から現在まで40万台を下回ったことは一度もない。ピーク時の320万台超から落ちに落ちて、99年に100万台を割り、最近は40万台強をうろついていた。40万台割れは衝撃だが、避けられない数字だった。

大型で戦略車、40―50代の回帰に期待


 厳しい需要の中で、まず各社は排気量125ccや250cc以上の大型クラスに戦略モデルを投入し、バイク好きの取り込みを図る。というのも、50cc以下の万単位の減少は補えないながら、51ccより上のクラスは合計で年数千台増加しているからだ。

 各社はスポーツバイク入門機にあたる250ccクラスを中心に商品力を高めており、ヤマハ発動機の「YZF―R25」や川崎重工業の「ニンジャ250」などの人気が高い。ホンダは歴史のある大型オフロードバイク「アフリカツイン」を復活。スズキも「グローバル機種『SV650』を国内投入し、品ぞろえを拡充したい」(同社)という。

 潜在ライダーとされるバイクの運転免許保有者1000万人のうち、特に40代後半―50代前半はバイク回帰の期待が大きい。免許保有者が多く、子育ても落ち着いてくる。また、大型免許の取得が難しくなかった55歳以上に対し、制度の変化で同世代の試験は難しく、バイクへの思い入れの強い人が多い。

 カワサキの清水取締役は「最近のオートバイは格好良く、環境性能もいい。見せて、若いころの気持ちを呼びさましたい」と話す。同社は独自に大阪・梅田駅前で誰でも入れる展示会を開き、潜在ライダーの目に触れる機会を増やしている。ホンダは趣味性の高い大型バイクの販売店網を強化する方針で、要求レベルの高いライダーの満足度を高める。

スポーツバイク、若い世代にささる


 ヤマハ発動機はここ2―3年に投入した新車がヒットし、市場の動向以上にスポーツバイクが好調だ。15年はMTシリーズが401cc以上の車種別販売で1―3位を独占する快挙を達成した。ヤマハ発動機販売(東京都大田区)の井下茂一営業統括部MC営業企画部長は「YZF―R25などで若い世代も獲得している」と語る。

 国内各社は世界で上位を争う。だからこそ、お膝元の国内市場をこれ以上縮小させられない。海外の売れ筋モデルも活用しながら、世界一うるさい日本のライダーの心をつかむ必要がある。

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日刊工業新聞2016年2016年4月15日/18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
少し前にヤマハ発動機が大島優子さんを広告塔に起用したことが思い出されます。バイクメーカーも手をこまねいているわけではないのでしょうが、市場全体では厳しい需要見通しですね。

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