接戦続く米大統領選、結果は株式市場にどう影響するか
投開票が迫る米大統領選は民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領の接戦が続いている。大統領選直後はあく抜け感から年末にかけて日本株も上昇するとの見方が多いが、その後の展開は未知数だ。トランプ氏当選の場合は追加関税措置、ハリス氏当選の場合は法人税率引き上げの実現可能性が米国の金利や実体経済、株価などに与える影響を注視していく必要がありそうだ。(山田邦和)
両候補の支持率は現在、ほぼ拮抗している。ただ大和総研の矢作大祐主任研究員は世論調査に現れにくい「隠れトランプ支持者」を考慮すると「ハリス氏が激戦州で勝つには世論調査で5%程度のリードが必要」とし、勝負の行方は予断を許さない。
大統領選の結果は米国の金融・財政政策にどんな影響を及ぼすのか。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフ為替ストラテジストは最大の違いが生じるのは財政支出の規模だと話す。今回同時に行われる連邦議会選の結果も併せ、4つのケースを想定した際、「上院・下院それぞれの多数派と新大統領の政党が全て一致する共和党の『トリプルレッド』、民主党の『トリプルブルー』の場合は財政支出が増加し、米金利への上昇圧力が高まりやすい。特にトリプルレッドの方が拡張規模が大きいと見られ、予想される金利上昇幅も最も大きくなる」(棚瀬氏)と読む。この場合最大1ドル=160円程度まで円安に振れる可能性があるとみる。
一方、日本株への影響は、どちらが勝つかによらず大統領選の通過自体がポジティブとの立場から、選挙直後の日経平均株価は瞬間的に4万円台に上昇するとの見方が多い。ただ中長期は様相が異なる可能性がある。
トランプ氏は中国製品への60%の追加関税を含む、一律10%の輸入関税引き上げなどを公約に掲げ、議会の承認なしに大統領権限で実行可能と主張。関税引き上げが実現すれば米国内で商品価格が値上がりし、消費や景気の落ち込みが予想され、日本の輸出企業にも逆風となる。
それでなくても米長期金利の上昇は株式の相対的な割高感を意識させる要因になる。足元で最高値圏にある米ハイテク株が崩れる可能性が高まり、間接的に日本株にも影を落としかねない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は株価について「選挙後、数カ月から半年後にリスクが意識された際の下限は(株価収益率14倍台の)3万5000円台まで見ておく必要がある」と話す。
ハリス氏当選でも法人税率を引き上げて減税の財源とする公約が企業の1株当たり利益の押し下げ要因になると意識されそうだ。議会とのねじれの有無で実現度は変わってくるとは言え、米国株・日本株がともに下落する局面もあり得る。