次世代の事業成長加速…住友化学、「低分子医薬」など生産体制強化
住友化学は大分工場(大分市)を、低分子医薬や核酸医薬の開発製造受託(CDMO)といった新成長領域をリードする生産拠点に育成する。大分工場に低分子医薬原薬・中間体の新プラントを立ち上げるなど、事業継続計画(BCP)対応を含めて生産体制を強化。子会社の住友ファーマとのシナジー効果も見据えつつ、次世代の事業成長を加速させたい考えだ。(山岸渉)
「成長ドライバーと次世代の成長事業を担う工場であり、責任は大きい」。瀧敏晃理事大分工場長は、こう力を込める。住友化学は、大分工場をライフサイエンスの中核工場として位置付ける。長らく現在の成長ドライバーである農薬を生産してきた拠点であるとともに、低分子医薬の原薬や中間体、核酸医薬など事業領域の拡大にも寄与してきた。
最近では、特に新成長領域に関わる医薬関連の体制強化を加速。10月には低分子医薬品原薬・中間体の製造プラントを新設・稼働し、関連する生産能力を従来比1割増に引き上げた。
新プラントは窯にカメラを設置し、計器室からモニターを通じて生産の状況をきめ細かく確認できるようにするなど、自動化やデジタル化の工夫が施されている。医薬品原薬や中間体を手がける岐阜プラント(岐阜県安八町)と岡山プラント(岡山県倉敷市)に続き、生産拠点として打ち出すBCP対策の一環でもある。
一方、今春には大分工場で低分子経口薬の原薬を手がけるマルチパーパスプラントを、住友ファーマから住友化学に移管した。住友化学として、低分子医薬CDMOの体制強化を図る狙いだ。
瀧工場長は「住友ファーマはさまざまな(医薬品に関わる)査察を受けており、ノウハウがある。品質管理のレベルを向上できる」と期待する。中長期的には住友ファーマの人材やノウハウなどと相乗効果を引き出し、大分工場を岐阜や岡山をリードする拠点に育てたい考えだ。
住友化学は併せて、10月に事業部門を再編。先端医療・ヘルスケア関連を所管するアドバンストメディカルソリューション部門を、次世代の新成長領域と位置付けた。ここに属するファーマソリューション事業部が、低分子医薬や核酸医薬のCDMOを担当する。
低分子医薬には住友化学の強みである有機合成技術のほか、住友ファーマを含む長年の実績に裏打ちされた製造プロセス開発や薬事対応など、幅広いソリューション力を生かす。また、核酸医薬も長鎖RNAなど同社の独自技術を生かせる領域で、顧客サポートに注力する方針だ。
瀧工場長は低分子医薬や核酸医薬CDMOなどの売上高について「次期中期経営計画の最終年度である2027年度に、23年度実績比で1・5倍を目標とする」としている。
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