抗がん剤の副作用抑制、候補薬が見つかった
和歌山医科大が発見
血栓治療、腎障害を改善
和歌山県立医科大学の近藤稔和教授らは、抗がん剤治療での副作用の一つである「急性腎機能障害」を改善する候補治療薬を発見した。血栓ができ血管を詰まらせる疾患の既存の治療薬「トロンボモジュリン(TM)」に着目。TMをマウスに投与することで、抗がん剤投与による活性酸素の発生などを抑え、腎臓の機能を守ることが分かった。抗がん剤による腎機能障害の改善につながると期待される。
抗がん剤の一種であるシスプラチンをマウスに投与し1日後にTMを投与。腎機能の指標となる尿素窒素(BUN)やクレアチニン(CRE)の値の上昇を抑えた。さらに尿の通り道である「尿細管」への傷害が減り、シスプラチンによる腎臓への悪影響を弱めることを突き止めた。さらに炎症反応の原因となる「炎症性サイトカイン」の発現上昇が抑えられ、保護作用を示すたんぱく質の発現量が腎臓で増えることが分かった。
またマウスから取り出し培養した尿細管の細胞にシスプラチンとTMを加えると、シスプラチンによる細胞内の活性酸素の産生を抑え、最終的にアポトーシス(細胞死)が減ることが分かった。
シスプラチンは投与後に急性腎機能障害を引き起こすことが知られているが、有効な治療法は報告されていなかった。成果は英科学誌サイエンティフィックレポーツ電子版に掲載された。
日刊工業新聞 2024年10月24日