イオンビームで世界最高速…量研機構などが高速の50%を達成した意義
超小型がん治療装置に
量子科学技術研究開発機構の西内満美子上席研究員らとドイツのドレスデンヘルムホルツ研究所、英インペリアルカレッジロンドンの国際共同研究グループは、レーザー光によるイオンビーム発生で世界最高速度となる光速の約50%を達成した。大規模な加速器を使わずレーザー技術のみでがん治療に必要な速度のイオンビーム発生が期待でき、超小型の粒子線がん治療装置の実現につながる。成果は英科学誌ネイチャー・フィジックス電子版に13日掲載された。
レーザー光の条件を最適化しイオンを多段階で加速させる手法で実験した。第1段階はレーザー光を照射した薄膜の前面でイオン群が加速。第2段階は薄膜の裏面側に残ったイオン群が自ら作る電場により加速が進む。第3段階は先に加速したイオン群が後から生成したイオン群との反発力でさらに加速する。ドレスデンヘルムホルツ研の出力約20ジュールの「Dracoレーザー」を用い、これまで世界最高だった光速の約40%を更新した。
粒子線がん治療は大規模な加速器と専用の建物が必要で、普及を妨げる要因の一つとされる。がん治療装置の小型化に向け、レーザー光で高速のイオンを発生する技術の進展が期待されていた。
日刊工業新聞 2024年05月14日