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Pepperのヒミツ(後編)「家庭に1台」へ兄弟機は誕生するか

5000人の開発者コミュニティー、ソフトバンクも後押し
Pepperのヒミツ(後編)「家庭に1台」へ兄弟機は誕生するか

GEヘルスケアの待合室応対アプリのイメージ(胸のタブレットは赤ちゃんの超音波立体画像)

 ペッパーの多様なアプリを支えるのが、デベロッパーの存在だ。開発者数は5000人、登録企業数は200社を超えた。スマートフォンのスマホアプリのようにロボアプリを開発するコミュニティーができている。ここに顧客企業を巻き込んで、開発者とユーザーを結びつける。ロボアプリを作る人と、使う人が共創するエコシステムの構築を目指す。

 「良いアプリさえ作れば売れる」とソフトブレーンの豊田浩文社長は目を細める。ソフトバンクコマース&サービスの代理店など企業1万社がアプリの販売チャンネルになるためだ。「1万社の営業力は極めて大きい。当社の受け付けアプリとペッパーで受け付けを再定義したい」と力を込める。

 ソフトブレーンの開発した受け付けアプリは、業務管理ソフトや名刺管理ソフトと連携してペッパーが応対する。担当者の私生活や、初めて名刺交換した際の思い出などを雑談する。ペッパーが担当者を呼び出し、迎えるまでのわずかな時間に話のネタを仕込める。打ち合わせを終えて見送る際に、「この娘(こ)は先月ノルマ未達で、トイレで泣いてたんデス。何卒お力添え下サイ」とペッパーに言わせることも可能だ。

 人間には難しいお願いでもペッパーを通せばネタになる。豊田社長は「ロボットは忘れず、間違えず、一人一人に応対できる。すべてのペッパーに受け付けアプリを導入したい」という。

MRI検査「患者さんの不安を和らげたい」


 GEヘルスケアは病院でMRI検査を受ける前の応対をアプリ化した。日本GEのラジェーンドラ・マヨラン氏は「検査前に患者さんの疑問に答え、不安を和らげたい」と説明する。超音波診断装置向けには胎児の月齢や体重に応じて、妊婦にアドバイスするアプリを開発。病院の待合室をにぎやかに変える。

 ソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部長は「アプリ開発会社主体のビジネスがようやく回り出した」という。ペッパーの発表からの約2年間、ソフトバンクがアプリを開発し、ペッパーの実装場面を探してきた。用途と市場が見えてきたため、パートナーの開発会社がアプリを商品化し、事業として成立しつつある。

 この裏側ではユーザーと開発会社とのマッチングを重ねていた。展示会での仲介数は1日100件以上。アプリによってはソフトバンクが買い支えて供給する。吉田本部長は「エコシステムは参画企業の資金が続かなければすぐ死滅してしまう。アプリの開発や市場開拓、技術もビジネスも全力で支援する」と力を込める。
<次のページは、MS・IBMとの連携で品質高める>

2016年2016年4月8日/13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ペッパーの開発コミュニティーは、まだまだスマホアプリの開発コミュニティーの比ではありません。もう二桁、普及台数を増やさないとデベロッパーが専業として食べていける状況にはならないと思います。現在はコミュニティーを直接コントロールできる大事な時期。ソフトバンクがアプリを買い支えたり、顧客を紹介して事業を支えるなど、あの手この手で健全なエコシステムを作ろうとしています。アジュールやワトソンを使いこなして、サービスをロボアプリとしてパッケージ化できるデベロッパーの登場が待たれます。そして、エコシステム内でAIの学習効果をシェアしたい。同じ機体でそろえられるためデータの共有だけでも効果はあります。ロボットはソフトウエアのように手離れ良くスケールするビジネ スモデルではありません。参入障壁が高い分、成功すれば先行者利益は大きいです。(日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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