「今後もデバイスの開発自体は継続するべきだと考える」(シャープCTO)
リスク取り新領域に挑戦
シャープは液晶パネルに代わる成長領域を見いだし、再出発できるのか。生成人工知能(AI)や電気自動車(EV)などの開発プロジェクト「I―Pro」を率いる種谷元隆最高技術責任者(CTO)に今後の方針を聞いた。
―現在の経営状況をどう捉えていますか。
「家電などのブランド事業は円安でも利益を確保しており、ベースはしっかりしている。生成AIのような技術と組み合わせて再成長に向かう。(17日から開く)技術展示会の内容はできるだけ早く実現したい。スピードが最も重要だ」
―台湾・鴻海精密工業との関係は。
「(EVなどの新事業は)シャープ主体で進める。電子機器製造受託サービス(EMS)の鴻海とブランド企業のシャープは立ち位置が異なる。鴻海もそう認識している。新規事業で鴻海が指示をすることはない。EVもシャープが提案して取り組んでいる」
―液晶などのデバイス事業の縮小や撤退が開発に与える影響は。
「デバイス事業はブランド事業に必要な部品を内製するために始まった。今後もデバイスの開発自体は継続するべきだと考える。ブランド事業を強くするためのデバイスというあり方に立ち戻りたい」
―過去10年の間に売上高研究開発費比率が減っています。
「開発投資は規模ではない。時代の先を行くところに集中投資していく。例えば2年ほど前から話題になった生成AIでも新しいものを生み出すことができた。利益が出たときは研究開発にも再投資するのが、アセットライトのあるべき姿だ」
―優秀な人材をどう確保しますか。
「積極的な若手の採用に加え、新しい雇用のあり方を考えねばならない。大きく見るとジョブ型雇用もその一つ。個人事業主の技術者に声をかけたり、スタートアップと開発したりと裾野を広げる」
―シャープらしさをどう取り戻しますか。
「従来の研究開発本部とは別の体制であるI―Proに期待している。特徴ある製品の多くは、I―Proの前身である『緊急プロジェクト』から生まれた。リスクがあっても新しい領域にいかに挑戦できるかという点で判断して開発を加速する。AI、EVに続く第3、第4のテーマをどんどん出したい」
【記者の目/中小型液晶、今後の展開先課題】
製品や技術の開発を進める上でも、足元の経営課題の解決が不可欠だ。中でも、規模を縮小して継続する中小型液晶パネルは、主力のスマートフォン向けの需要が減っている。EVなどの新事業に既存の設備や技術を活用してシナジーを発揮できるのか。展開先を見いだせなければ、さらなる構造改革も必要になる。(大阪・森下晃行)