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「第2のムーアの法則」提唱…半導体再興へ、チップレット配線を微細化
半導体再興へー大学の最先端研究 #18
大阪公立大学の笹子勝客員教授は、パナソニックでエキシマレーザーを使った半導体微細加工向けリソグラフィー技術を開発。28ナノメートル(ナノは10億分の1)世代までの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の量産も手がけた。前工程を中心としたこれらの経験を踏まえ、現在は3次元(3D)実装に向けた横方向のチップレット配線技術を研究する。
同大の半導体超加工・集積化技術研究所では、チップ間配線の微細化に向け、量子ビームやナノインプリントなどの技術を融合。「この再配線層(RDL)を微細化する『第2のムーアの法則』により、今後すべてのデバイスがチップレットになる」と見通す。
前工程で使う化学的機械研磨(CMP)技術を後工程に導入し、3D実装材料の効率的な開発を目指す研究会を発足。2023年には横浜国立大学の研究会と合併して「3Dヘテロ集積(3DHI)アライアンス」を立ち上げ、現在、参画企業は材料・装置メーカーなど70社を超える。
チップが多層化する中、「微細RDLによってチップ間の配線長を短くし、低消費電力化と高速化を狙う『微細化』の手法は前工程と同じ」だ。現在までに、約1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)寸法の微細RDL形成に成功している。
21年に設立した「量子超加工ラボ」では、研究開発を事業化につなげる“イノベーションソムリエ”として、十数社の民間企業を相手に、国家プロジェクト提案などの技術コンサルティングを行う。
生成人工知能(AI)やメタバース(仮想空間)の普及により半導体の需要が急増している。「日本が強い装置、材料分野でビジネス拡大の大きなチャンスがある」と強調する笹子客員教授。大学では材料開発と評価スキームを迅速に回すことでこれを支える。(随時掲載)
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日刊工業新聞 2024年09月05日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。