振動発電素子、市販材で量産しやすく…IoT機器電源に提案
横浜国立大学の中村優太大学院生と大竹充准教授らは、市販材で作れる振動発電デバイスを開発した。片持ち構造の板バネをコイルの中で振動させて発電する。スイッチのようにバネを指で弾く程度の振動で150ミリワットの出力が得られる。構造が簡便なため量産しやすい。IoT(モノのインターネット)デバイスの電源や振動機械のエネルギー回収などに提案していく。
電磁鋼板製の板バネをコイルの中で振動させる。板バネの先に永久磁石を配置し、板バネが上にたわんだ時にはS極、下にたわんだ時にはN極と近づける。すると板バネの先端がそれぞれN極とS極となり、板バネ中の磁界の向きが振動に応じて反転する。
コイル内部で磁界の向きが入れ替わるため電磁誘導でコイルに電流が発生する。従来は磁界を垂直にかけていたが、板バネ面内方向の磁界を最大化するように磁石の配置を変えた。すると垂直方向に比べて発電量が4倍に上昇した。
板バネの起振には装置の上を歩く衝撃や手で操作するスイッチ、大型機械の振動などを利用する。振動によって頻度や衝撃力が変わるため装置を最適化する必要はあるが、指で弾くスイッチ方式は150ミリワット、歩行は20ミリワット、鉄道の走行振動では2ミリワット程度の出力を想定する。
連続的に振動が発生する場面では蓄電して利用し、低頻度の場面では振動を検出に使うなど、システムに合わせて設計する。従来は出力確保ために特別な軟磁性材料を用いる研究が中心だった。
日刊工業新聞 2024年9月4日