中国輸出運賃2倍超…海運市況の上昇が止まらない
5月以降、海運市況が上昇を続けている。紅海・スエズ運河を避けて喜望峰を経由する商船の迂回(うかい)航行が長期化し、船腹の不足や港湾の混雑などの影響が日増しに大きくなっているためだ。足元の中国輸出運賃コンテナ指数(CCFI)は前年の2倍超に上昇した。今後は米大統領選をはじめ不確定要素が複数あり、先行き不透明な状況が続く。(梶原洵子)
コンテナ船の短期運賃は2023年末まで需給バランスの軟化で下落傾向にあったが、紅海での武装組織による商船への攻撃とアフリカ・喜望峰経由の迂回航行の増加を受けて運賃が上昇。その後、2―3月から閑散期でもある4月にかけて一度落ち着いた。5月以降に荷動きの増加や船腹・コンテナ不足により上昇し、6月に入って傾向はさらに強まり、7月初めのCCFIは2000を超えた。
最大の理由は喜望峰経由の迂回航行の長期化だ。一度は状況が落ち着いたが、喜望峰経由の航行は紅海経由に比べ日数が2―3週間ほど長いため、時間が経つと、「アジアへの船の戻りが遅く、不足が目立ってきた」(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス〈ONE〉)。
この状況を受けて荷主が出荷を前倒ししているほか、港湾の混雑、混雑や船の遅延で本来積むはずの貨物を積めないなどの事象が重なり、船腹需給のタイト感が増していった。迂回航行が長期化するほど、影響は雪だるま式に大きくなる形だ。一方、米国の小売り販売などは好調で、コンテナ船の需要は増加している。
鉄鉱石・石炭・穀物などを運搬するバラ積み船の運賃を示すバルチック海運指数も、上下しているものの回復傾向だ。喜望峰への迂回の影響に加え、船腹需要は堅調となっている。商船三井によると最も大型のケープサイズはブラジルの鉄鉱石の出荷が好調で1―3月は強く推移。パナマックス以下の船では、パナマ運河の渇水により通峡隻数が制限されたことで、用船市況を下支えした。
自動車船は北米などの堅調な自動車需要に加え、紅海問題の影響で一部の港湾で混雑が発生したため、船腹需給はタイトな状況が続いている。欧米が中国製の電気自動車(EV)に対して高い関税をかけているが、「中国出しEVの輸送量が減っている動きは見られない」(商船三井)。
雨期に入れば、パナマ運河の通峡隻数の改善などでバラ積み船は需給緩和も予想されるが、全体感として年末にかけて堅調な需給の推移が見込まれる。ただ、中東情勢の緊迫化の原因であるイスラエルとハマスが停戦する兆しはいまだに見えない。米大統領選挙や対中関税、米東岸の港湾労使交渉などの影響も注視が必要で、海運市況は予想が難しい状況が続きそうだ。