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大学教員など、「研究時間減少」下げ止まりの背景

大学教員など、「研究時間減少」下げ止まりの背景

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文部科学省は大学などの教員の研究時間を調査し、研究時間の縮小が下げ止まる傾向にあることを明らかにした。教育活動に充てる時間が増えており、懸案だった競争的資金の申請報告業務の負荷はわずか4%だった。国はリサーチ・アドミニストレーター(URA)などの研究管理人材を増やして業務負荷を軽減する方針だが、改善効果は限定的になる可能性がある。

大学等教員の職務活動時間割合

大学教員などが実際に研究に充てている勤務時間割合を調査した。2023年度は32・1%で18年度の32・9%から0・8ポイント減少した。減少幅は縮小しており、下げ止まる可能性がある。

教員数は02年度の17万1094人から23年度は19万6305人へと増えている。ただ研究時間割合が02年度の46・5%から32・1%に減った。そのため実質的なフルタイム換算研究者数は7万9604人から6万3014人に減った。

背景には教育活動の増加がある。教育時間割合は02年度の23・7%から23年度は30・1%に増えた。学内事務などに費やす時間は19%台で維持された。制約要因を研究者に聞くと教育専任教員の不足や教授会などの大学運営業務が上がった。教授会などの大学運営業務を政策誘導で削減することは難しい。

競争的研究費や外部資金獲得のための事務手続きに費やした時間は申請業務が3%、報告業務は1%だった。こうした管理業務は研究者から不満を集めており、大学はURAを増やして負荷軽減を目指している。だが負荷を計ると、実際に費やす時間は大きくなかった。URA増員の効果は限定的にとどまる可能性がある。URAは管理業務の代行よりも、研究企画で外部資金を獲得し費用対効果を示していく必要がある。

日刊工業新聞 2024年06月27日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
URAの仕事は競争的資金の事務仕事代行だけではなく、研究企画や動向調査、研究組織としての戦略立案なども期待されています。予算をとってくるための仕事で、予算の執行管理よりも重要とされています。研究時間捻出の観点では競争的資金の事務作業の負担は研究者から槍玉に挙がります。科学技術系予算は増えているけど自由に使える運営費交付金が減っている、競争的資金は自由がないし事務作業が繁雑、負担が大きい、とされてきました。そのため申請フォーマットをそろえるなどの努力がされています。こうした努力は粛々と続けてもらうとして、実際に費やしている時間は全体の4%、年間で一人100時間くらいしかありませんでした。がんばって負担を半分にしても2%分です。URAとしては代行だけだと厳しいかもしれません。研究時間の捻出へは他にも手を打たないといけません。調査では学内の会議の時間も聞いていて、週間2.8時間ほど。年間50週だと140時間くらいになります。文科省は教授会を減らすべしなどと推奨できるはずがないので、大学が自主的に効率化を考える必要があります。この調査は面白く、工学では助教から講師にあがるところで研究時間が急減する様子が観察されています。理学では助教、講師、准教授、教授の研究時間割合が63%、51%、46%、41%と減り、教育時間割合が20%、27%、27%、27%となります。工学では研究が56%、33%、38%、33%、教育が25%、42%、31%、33%と講師で教育負担が増えています。講師は30-40代、大学教員として研究や教育、どう生きていくか決めるころです。若手支援で助教は研究が厚くなったけど、中堅になるころに揺り戻しがきているのかもしれません。工学は個人主義というよりチーム型のラボが多いのでラボ内での分担が見えているのかもしれません。この調査はFTE換算係数を出すための調査なので細部の分析は精度が低いです。大学で調査すると打ち手が見えてくるかもしれません。

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