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マイナス金利政策導入から2カ月。浜松発、地域金融機関トップの本音

設備投資「期待」から「実需」を
マイナス金利政策導入から2カ月。浜松発、地域金融機関トップの本音

左から青木氏、御室氏、守田氏


“苦肉の策”


 2%の物価上昇目標を掲げる日銀が、景気浮揚策として打ち出した“苦肉の策”であるマイナス金利政策。金融機関が日銀に預ける当座預金をマイナス金利とすれば、金融機関は同預金を企業融資に振り向ける効果を期待できる。だが株式市場による評価は一時的なものにとどまり、足元では地域金融機関の経営悪化や預金金利引き下げに伴う”タンス預金“の増額という”副作用“の方を懸念する声が少なくない。

 財務省がまとめた15年10―12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比8.5%増と11四半期連続で増加した。年度前半に慎重だった設備の更新需要がようやく出始めたことを反映するが、先行きは楽観できない。原油安と中国経済の減速懸念を背景とする年初来の国際金融市場の混乱を受け、企業の投資マインドが冷え込む懸念がある。

マイナス成長?


 日銀のマイナス金利が所期の狙い通りに機能し、大手企業を中心に持ち直しの動きを示している設備投資は今後も堅調に推移するのか。シンクタンクの間では「金利を下げても、実需がなければ設備投資は動かない」との見方が少なくない。

 主要シンクタンクは1―3月期の実質国内総生産(GDP)成長率を年率換算でゼロ%台と見通し、中にはマイナス成長との予測もある。このため日銀は4月または参院選に突入する7月に追加緩和に動き、マイナス金利幅を引き下げるとの観測も市場にくすぶる。

手詰まり感


 しかし、先の20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、マイナス金利を導入した日欧の金融政策に手詰まり感を否めないことから、先進国は財政出動による内需拡大策に期待感が示されている。

 利下げだけでは反応が鈍い設備投資をいかに促すか。政府は緊急経済対策を盛り込んだ16年度補正予算案編成の検討に入り、17年度の消費増税延期まで取り沙汰されている。ただ、これらの施策は対症療法に過ぎない。

 いかに実需を掘り起こし、地方創生につなげていくのか。安倍晋三首相が自ら「道半ば」と指摘する成長戦略を総仕上げすることにかかっている。「急がば回れ」である。
(文=神崎明子)
日刊工業新聞2016年4月4日付中小・ベンチャー面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
もともと低水準にあった金利がわずかながら下がったところで、それを理由に設備投資に踏み切る企業は少ないというのが今回のインタビューで一致した意見。日本経済の再生には、新たな産業を生み出すことや消費意欲を刺激するような商品やサービスの開発が重要であることを再認識しました。

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