DC余力電力を需給調整市場に供給、東芝が新サービス
東芝はデータセンター(DC)などに設置された無停電電源装置(UPS)の余力電力を活用し、「需給調整市場」に供給するサービスを2026年度に始める。開発中のUPSが、同市場への参入に必要な技術要件を満たすことを確認した。再生可能エネルギーの普及により、需給を一致させる調整力として電力の供給が求められている。仮想発電所(VPP)など関連サービスと組み合わせたソリューションを提供し、再生エネ普及に貢献する。
UPSは停電(落雷による瞬停)などが起きた際、設置した蓄電池を通じて電力を供給することで施設内の機器を保護する。機器に必要な最大の負荷電力に合わせて設計しているため、一般的に電力容量に3分の1程度の余力があるという。
東芝ではこの余力を生かそうと、DCなどに多くの納入実績のある自社製UPSを改良し、外部からの指令によってUPSの蓄電池を充放電するなどの機能を追加した。蓄電池には、頻繁に充放電を繰り返しても容量劣化の少ない自社製のリチウムイオン電池「SCiB」を採用した。
開発中のUPSは、需給調整市場を運営する電力需給調整力取引所(東京都千代田区)の定める技術要件を満たしていた。今後、川崎市に23年に設置した新研究開発棟で、DCなどでUPSを運用することを想定した事業実証を始める。
さらに自社の仮想発電所などのサービスと組み合わせ、需要家向けのサービスを提供する。DC側は市場に電力を販売して対価を得られる利点がある。
再生エネの普及拡大で変動する需給状況に対応するため、21年に一般送配電事業者が需給バランス維持や周波数制御に必要な調整力を調達する需給調整市場が整備された。24年4月には外部の指令から10秒以内など短時間で電力を供給する「一次調整力」の取引も始まっており、重要性が増している。