デンソー・アイシン・ジーテクト…車部品メーカー、EV成長鈍化で競争激しく
完成車メーカーの電動化戦略の進展を受けて、自動車部品メーカーも関連製品の事業拡大に力を注いでいる。部品各社の業績でも電動化関連のボリュームが増え、今後の成長のカギを握る。需要の一巡や補助金政策の見直しで、足元では電気自動車(EV)市場の成長が鈍化し、電動化製品や技術を取り巻く競争も激化している。部品各社は競争力確保に向けた手を打つ。
「電動化製品や先進運転支援システム(ADAS)の拡販が事業をけん引した」。デンソーの松井靖副社長は2024年3月期決算について話す。同社にとって電動化は注力領域の一つ。特にエレクトリフィケーションシステム事業はインバーターやモータージェネレーターの販売が増加し、売上高が前期比19・1%増の1兆2416億円に拡大した。
アイシンはハイブリッド車(HV)用トランスミッション(変速機)や電動駆動装置「イーアクスル」など電動ユニットの24年3月期の販売台数が同66・1%増の226万台となった。豊田自動織機は24年3月期に電池事業を含む電子機器事業の売上高が同62・0%増の1985億円と伸びた。
ジーテクトもEV関連売上高が24年3月期に同88・9%増の100億円と急伸。欧州で新規受注したEV車体部品の生産が年間を通して好調だった。小糸製作所は中国EVメーカーの比亜迪(BYD)や小鵬汽車からの新規受注を弾みに、中国市場における中国自動車メーカー向け売上高を27年3月期に24年3月期比約2倍に引き上げる計画だ。
過熱気味だったEV需要は巡航速度になりつつある。ただ、デンソーの林新之助社長は「(電動化は)中長期では必ず進む。事業ポートフォリオの転換はブレることなく進める」と言い切る。同社は25年3月期に電動化などの注力領域への設備投資として3800億円を計画する。豊田自動織機も24年1月に石浜工場(愛知県東浦町)の第二新棟を稼働し電池の供給量を強化。同社の伊藤浩一社長は「OEM(完成車メーカー)に採用してもらう製品を増やしながら伸ばしていく。投資や研究開発は手を緩めずに進めたい」と語る。
一方、これまでの急速なEVシフトによって市場競争が激化し、中国市場などでは日系自動車メーカーの販売が苦戦。自動車部品メーカーにとっても、主要顧客の減産で収益確保が難しくなる状況が浮き彫りとなった。
アーレスティは主要顧客である日系自動車メーカーの減産の影響で、中国工場での減損損失として24年3月期に約90億円を計上。エイチワンも中国での事業環境の悪化を受け65億円を減損損失として計上した。今後も中国を中心に厳しい市場環境の継続が想定される中、電動車向け部品の技術開発や販路開拓の一方で、需要変動に柔軟に対応する生産体制の構築や合理化努力も必要となりそうだ。(編集委員・村上毅、大原佑美子、名古屋・川口拓洋、同・増田晴香が担当しました)
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