建材・住宅に協働ロボット…LIXILが試験工程に導入
ロボットを試験工程にも活用―。安全柵が要らず、人と同じ空間で作業できる協働ロボットの用途が広がっている。住宅設備大手のLIXILは窓の開閉などの試験工程にデンマークのユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットを導入し、試験の自動化を進める。産業用ロボットを含めてロボットは自動車や電気・電子向けがメーンで、建材などの住宅関連業界で使われる例は少ない。人手不足は全業界の共通課題であり、URは訴求する業界の裾野を広げる考えだ。(高島里沙)
LIXILの技術研究開発センター(千葉県野田市)では、窓やドアなどの建材商品の実験や試験を実施している。その中でロボットを活用するのが、出入り口ではない装飾窓の試験工程だ。窓のハンドル操作の耐久性を確認する内容で、施錠・解錠するためのハンドルの回転と、窓の開閉の2種類の試験が必要となる。
ロボット導入前は、回転作業を人が担い、開閉作業にはシリンダーを使っていた。人が1万回以上もハンドルを回す単純作業を繰り返す必要があった。この一連の工程をロボットに置き換えることで、試験の自動化を実現。回転と開閉工程にはそれぞれ約20日を要していたが、無人化による工数削減などで合わせて3週間まで短縮した。
同社商品試験センターの岡部冴樹氏は「評価納期全体の短縮につなげることができ、1年で対応できる試験数も増えた」と語る。またコロナ禍の3密(密閉・密集・密接)対策にも役立ったという。
ロボットの導入を始めたのが2019年で、徐々に導入台数を増やしている。導入のきっかけについて岡部氏は、「省人化を進め、人の手離れを良くするために検討を始めた」と振り返る。
LIXILでは25年3月までに一層の試験工程の自動化を進めたい考えだ。現在のロボット活用はハンドルの開閉と施錠・解錠の工程のみにとどまる。操作力やネジがゆるんでいないかといった点は人が目視で確認する必要がある。岡部氏は「ビジョンシステムや力覚センサーと連動させて人の介在を減らしたい」と展望を語る。
富士経済(東京都中央区)の調査によると、28年の協働ロボット市場は21年比約3倍の2430億円に拡大する見通し。URの協働ロボットは、金属メーカーの破壊・引張試験や化学系メーカーの材料焼結後の形状やひび割れ検査などにも使われている。建材業界での試験用途はLIXILが初めてとなり、今後は建材・住宅関連でも導入拡大を目指す。