寿命3倍、東芝エネルギーシステムズが開発「CO2吸収液」の実力
東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区、島田太郎社長)は、劣化速度を従来の3分の1に抑える新しい二酸化炭素(CO2)吸収液を開発している。2023年度には佐賀市と共同で、同市の清掃工場に納めた同社製のCO2分離回収装置を用い、吸収液の約8000時間の運転を実施して性能を確認、良好な結果を得たという。
通常、排ガスからCO2を分離する際、アミン系の化学水溶液を用いる。分離回収装置では、発電や焼却などで発生した排ガスから、吸収塔内で低温状態の吸収液を用いてCO2を選択的に回収する。その後、再生塔で吸収液を加熱することで、CO2を放出させる。放出後の吸収液は吸収塔へと戻し、CO2の吸収に再利用する。 同社では13年に佐賀市の清掃工場に小型のCO2分離回収実験プラントを納入しており、16年には商用設備を納めている。同工場ではゴミ燃焼時に発生する排ガスの一部から、1日最大でCO2を10トン分離・回収が可能だという。
開発した新しいCO2吸収液は、CO2回収量1単位当たりの必要エネルギーは現行と同等を維持しつつ、吸収液の劣化度合いを抑えることに成功した。同社パワーシステム事業部の斎藤聡炭素利活用技師長は「CO2と結合する時の反応熱の小さいアミンを選び、さらにそこから壊れにくいアミンを選んでいった」と説明する。
吸収液の劣化を抑えることができればCO2回収システムの維持管理費低減のほか、大気へのアミン成分の排出量も減り、環境負荷も少なくなるなど、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に貢献できる。
新しい吸収液を用いた佐賀市清掃工場での約1年の実証では、劣化速度やアミンの排出量などを現行品と比較し、試験プラントと同等の結果を確認した。斎藤炭素利活用技師長は「吸収液の性能をアピールしつつ、分離回収装置とのセットで顧客に販売していきたい」と期待する。