三菱重工エンジがCO2回収で「脱炭素化」成長目指す
三菱重工エンジニアリング(横浜市西区、寺沢賢二社長)が二酸化炭素(CO2)の排出を低減する「脱炭素化」による成長の布石を打っている。排ガスからCO2を回収するプラントを国内外に展開しているのに加え、適用範囲を広げる実証に相次いで参画している。脱炭素化をにらんだ専任組織も立ち上げた。環境対応の戦略にかじを切る三菱重工業グループで、同社が技術面のカギを握る。(孝志勇輔)
「CO2の回収が中核技術。コロナ禍に入ってから問い合わせが急に増えた」。三菱重工エンジで最高技術責任者(CTO)を務める洲崎誠執行役員はこう説明する。
三菱重工は関西電力と協力し、30年前にCO2回収の研究開発を開始し、これまで知見を積み重ねてきた。排ガスからCO2を取り除くための、要となるのがアミン吸収液。劣化しにくく、高い吸収性能を持つ。CO2回収プラントで排ガスを45度C程度まで冷却し、アミン吸収液を散布すると、CO2の吸収反応が起こり、回収できる仕組みだ。
関電の発電所での回収技術の実証を経て、国内外に回収プラントを13基納入した。回収したCO2は主に尿素の製造に使われている。米テキサス州の石炭火力発電所向けに納入、稼働した回収プラントは世界最大規模で、CO2回収量は年間160万トン。古い油田からの原油の増産にCO2を利用する。このほかに現在2基を建設中だ。
ただ洲崎執行役員は「CO2の使い道がないと回収に至らない」と説明する。脱炭素化の動きが加速する一方、CO2回収プラントの受注機会が増えていくには、CO2の用途が広がることも必要だ。
三菱重工エンジでは回収技術の強化や適用拡大に携わる専任組織を設けている。製鉄所やセメント工場、ゴミ焼却施設などのCO2の低減ニーズを取り込む。「回収プラントをベースに(顧客への)対応メニューを増やす」(洲崎執行役員)考え。英国では大手電力会社と連携し、バイオマス発電の排ガスから、1日当たり約300キログラムのCO2を回収する実証にも取り組んでいる。
三菱重工がグループを挙げて、環境負荷の低いエネルギーへの転換を事業戦略として進める中、CO2回収技術を持つ三菱重工エンジは「重宝」されそうだ。
化学プラントや交通システムを展開する三菱重工エンジにとって、CO2の回収が新たな収益源になり得る。脱炭素化の追い風を受けながら成長に弾みを付ける。