「ニデック」京都タワー…京都で広がる命名権施設が発揮する効果
京都の玄関口、JR京都駅前(京都市下京区)の京都タワーが4月から「ニデック京都タワー」として営業を始めた。昨秋にはプロバスケットボールチームの京都ハンナリーズのホーム、京都市体育館(同右京区)も「かたおかアリーナ京都」に名称変更。知名度向上や社会貢献、運営・改修資金調達などが目的のネーミングライツ(命名権)契約が京都でも広がっている。慣れ親しんだ施設名変更は感慨深くも、新しい時代の到来も予感させる。(京都総局長・松中康雄)
大型連休は後半戦。京都駅は国内外の多くの観光客でごった返す。その表玄関にそびえ立つランドマーク、ニデック京都タワーは灯台をモチーフとした塔体で、高さ131メートルと京都で一番高い建造物。1964年12月に開業し、2024年は60周年の節目。レストランや京都の有名土産ショップ、ホテルなどを備え、観光のスタート地点となる。
鉄道を軸に地域密着で幅広い事業を展開する京阪グループが所有・運営する。同社はさらなる地域貢献や事業展開に向け、モーター大手のニデックとネーミングライツ契約を結んだ。期間は4月1日からの5年間で、契約額は非公表。京阪グループ初のネーミングライツとなる。
同タワーは30年以降の再整備を検討中で、契約金はこの費用にも充てる。同契約に合わせ、両社でさまざまな企画も考えていくとし、イベントなどを通じて京都を盛り上げていく考えだ。
一方、ネーミングライツパートナーとなったニデックは、創業50周年の23年に日本電産から社名変更したばかり。海外で広く浸透するブランド名を社名としたが、岸田光哉ニデック社長は「より広く知ってもらいたいという思いもあり、今回のネーミングライツとなった」と狙いを話す。
スポーツ施設や文化施設などに対して命名できるネーミングライツは米国で生まれ、90年代にスポーツ施設の名称を企業に売却する形態で広まったとされる。日本では03年に東京スタジアム(東京都調布市)がネーミングライツで「味の素スタジアム」に改称。その後、日本の経済政策の失敗と低迷、少子高齢化、失われた30年などを背景に、地方自治体の財政が悪化する中、収入源としてネーミングライツは日本全国に広がる。
京都では大手企業に加え、中堅・中小企業によるネーミングライツも増えている。知名度向上や地元貢献のほか、社員のモチベーションアップ、リクルートといった面でも副次的効果が見られる。
例えば、二次電池検査システムなどを手がける片岡製作所(京都市南区)のネーミングライツで、京都市体育館が23年10月から「かたおかアリーナ京都」として始動した。地域貢献はもちろん、あらゆる産業で人手不足感が増す中、知名度向上による採用へのプラス効果も期待される。
実際、産業用電機・電子機器を扱う技術商社のたけびしは、19年に本社近くの京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場(同右京区)のネーミングライツを取得し、「たけびしスタジアム京都」となった。陸上競技大会をはじめ、用途が広く稼働率も高いことから、学生への知名度向上にも貢献。同社幹部は「リクルートの幅が広がった」と打ち明ける。
スポーツ施設ではこのほか、わかさ生活(同下京区)による「わかさスタジアム京都」(同右京区、西京極野球場)、島津製作所による「島津アリーナ京都」(同北区、京都府立体育館)がなどある。一方、文化施設ではロームによる「ロームシアター京都」(同左京区、京都会館)や京セラによる「京都市京セラ美術館」(同、京都市美術館)が、いずれも50年間、50億円の長期契約で契約金は改修費などに充当される。歴史的な文化施設に企業名が含まれることは当時議論を呼んだが、今ではすっかり浸透している。