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NTTが通信インフラ分離案、求められる公正競争環境

NTTが通信インフラ分離案、求められる公正競争環境

総務省の通信政策特別委員会に参加した三木谷楽天モバイル会長(前列左)、宮川ソフトバンク社長(前列右から2人目)、高橋KDDI社長(前列右)

NTT法の規制を緩和する条件として、NTTが日本電信電話公社から引き継いだ局舎や電柱などの国内通信インフラを別会社に切り出す案が浮上している。楽天モバイルの三木谷浩史会長が短文投稿サイト「X(旧ツイッター)」上で指摘したのに続き、総務省の特別委員会でもKDDIの高橋誠社長やソフトバンクの宮川潤一社長が言及した。NTT法改正には国際競争力の強化だけでなく、公正競争確保に向けた環境整備も求められそうだ。(編集委員・水嶋真人)

「競争事業者が持ち得ない、NTTのみが承継した“特別な資産”だ」―。KDDIの高橋社長はNTTが全国に持つ局舎約7000ビル、電柱約1186万本、通信ケーブルを通す地下パイプ(管路)約62万キロメートルをこう評し、「我々はボトルネック設備と定義している」と述べた。NTTは数百万キロメートルに及ぶ通信ケーブルも持つ。アナログの固定電話回線であるメタル回線の設備シェアは約94%、光ファイバーは約74%ある。

高橋社長は通信技術の潮流を踏まえてボトルネック設備の重要性を訴えた。普及が進みつつある第5世代通信(5G)は利用する電波の周波数が従来の4Gより高く、1基地局当たりのカバー範囲が狭くなる。基地局数が増えるため、基地局とつながる光ファイバー網はより緻密化する。高速大容量・低遅延という5Gの特徴を生かすには、端末の近くに配置したサーバーでデータ処理を行うマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)が必要となる。

「(このサーバーの置き場所として)NTTが全国に持つ局舎の活用が必須になる。国のインフラとしてしっかりと公平性を担保してほしい」と高橋社長は指摘。海外の事例ではブロードバンド網を担う会社として豪州政府が株式の100%を保有するNBNがあり、同国の通信最大手テルストラと資本分離していると紹介した。

ソフトバンクの宮川社長も「NTT法の撤廃を進めるのならNTTからボトルネック設備を構造的に分離し、アクセス会社として独立した資本構造にすることが真の公正競争の実現につながる」と語る。

宮川社長はアクセス会社に対し、NTTの競争事業者であるソフトバンクやKDDI、楽天モバイルなどへの適正で公平な設備提供義務を課し、アクセス業務に専念できるよう業務範囲を規制する必要性を強調。デジタル化を通じて地域活性化を目指す政府のデジタル田園都市国家構想の実現に向け、「アクセス会社が光ファイバーの設備や維持など国の将来に必要な責務を負うべきだ」とした。

楽天モバイルの三木谷会長は発送電分離で電力業界の競争が活性化したとして「国内における競争を促進し国民に利益を還元することが重要。技術面での日本の復活とは分けて議論すべきだ」とする。公正競争の観点からNTTドコモの携帯電話部門をグループ外とすることも求めた。

三木谷会長は「NTTの独占回帰は“先祖返り”だ」と猛反発する一方、高橋KDDI社長、宮川ソフトバンク社長は時代に合った形でのNTT法の見直しには一定の理解を示す。それだけに、“落としどころ”と言える国内通信インフラ切り出し案へのNTTの回答に注目が集まる。

日刊工業新聞 2023年09月21日

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1985年の日本電信電話公社の民営化を受けて制定したNTT法を見直す議論が進んでいる。通信手段の主流が固定電話の時代に作られたNTT法には時代遅れとなった規制がある一方、電柱や通信局舎など国民負担で作られた特別な資産を公平に扱う義務が不可欠だ。国内通信業界の今後を左右する議論の核心に迫る。

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