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「国際卓越研究大学」に再挑戦、早稲田大学の柱は学際研究と国際化

早稲田大学は23日、2032年の創立150周年とその先の事業構想を発表した。人文・社会科学を主体とした学際研究は、データ解析で紛争を回避する実証型の平和研究と、ボランティア活動の蓄積にロボット技術を合わせた被災地・難民支援に着手する。また教育の国際化で日本人学生全員に留学経験させる一方、入学者の2割を留学生にする。この学際研究と国際化を柱に、文部科学省の国際卓越研究大学第2弾に応募することを公表した。

学際研究は国立大学で理科系がリードするのが一般的だ。対して私立総合大学の早大の分野比率は人文科学3割、社会科学4割、自然科学3割。そこで全学学際研究で走り出しているカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)に次ぐ二つのテーマは、文科系を中心に据えて他大学と差別化する。

平和科学研究は過去200年の紛争ビッグデータを人工知能(AI)で解析。取得データから世界の情勢変化を早期にキャッチし、紛争回避を働きかける仕組みを整備する。また人が動きにくい被災地や紛争地ではロボットを、年約9000人の学生が活動するボランティアセンターの経験を踏まえながら投入する。

教育の国際化は、新型コロナウイルス感染症の拡大前の19年度で、送り出し学生が約4600人だった。32年度に6600人と4割増にする。留学生や帰国生を合わせると、1学年約8900人の全員が1度は外国経験を持つ規模になる。

受け入れの留学生は同じく約8300人だったのを、1万人と2割増にする。学部・大学院で全学約5万人の学生の2割が外国人という環境にする。

今回「40年までに日本で、50年までにアジアで、最も教育効果の高い大学へ」との目標を掲げた。これに向けて4月1日付で、研究力強化の司令塔「グローバル・リサーチ・センター」、社会貢献活動を展開する「グローバル・シチズンシップ・センター」を設立。教育の既存センターと合わせ相乗効果を出していく方針だ。

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日刊工業新聞 2024年04月24日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
国際卓越研究大で初回、対象とならなかった応募大学は、文部科学省との面談を経て戦略立て直しに動いている。早大の場合は「カーボンニュートラルを打ち出していたが、研究テーマでの勝負ではなく、研究の仕組みを変える提案を求めているといわれた」(田中総長談)という。そこで新設したのがグローバル・リサーチ・センターだ。そして「人文・社会科学系の強みをもっと打ち出すべきだ」という助言も受けて、「政治、経済、法学、文学という、早稲田で一番、古くて強い学問分野」(同)を前面に打ち出すことにした。これらは科研費などの採択ランキングで早大の全国トップが目立つ領域で、確かに理工系に絞って国立大と張り合うのとは違う個性が、アピールできると感じた

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