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東工大と統合する東京医科歯科大、湯島キャンパス再開発

東工大と統合する東京医科歯科大、湯島キャンパス再開発

大規模再開発に入る東京医科歯科大の湯島キャンパス(同大提供)

東京医科歯科大学は病院を中心とする湯島キャンパス(東京都文京区)の大規模再開発に着手する。東京都江東区に保有する土地1万8000平方メートルの貸付料の一時金を再開発費用に充て、まず数棟を建て替える。同大は10月に東京工業大学と統合し「東京科学大学」として発足する予定で、両大学における医工連携体制や診療データ活用の病院設備も整備する。土地活用は東工大が先進的とされ、教育・研究以外の点でも強者連合の事例として注目される。

東京医科歯科大は江東区・越中島に保有する土地について、野村不動産と75年間の定期借地契約を結んだ。同大の希望で地代より一時金を優先した。越中島では、老朽化している職員宿舎の取り壊しに4月から入った。

同大では資金調達のめどが立ったことから湯島キャンパスと、同キャンパスに近接する駿河台キャンパス(同千代田区)を合わせて再開発を進める。湯島キャンパスには戦前の建物も立地している。

国立大学の病院は財政投融資で整備するが、病院の収入は診療報酬に縛られるほか、教育・研究での使用も多く、多額の黒字は難しい。また教育・研究施設は文部科学省の施設整備費によるが、各大学への配分状況は厳しい。自前で病院や教育・研究施設を建て替えることは非常に難しい。

東京医科歯科大は8年ほど前に中長期施設計画のキャンパスマスタープランを策定した。だが実現したのは、2023年10月に開設した「機能強化棟(C棟)」にとどまっていた。

東工大との統合による研究力強化では病院がカギを握ることから、病院設備にも予算を振り向ける。先進の手術ロボットの導入に加え、エアコンや照明設備など旧型設備の更新対応などを進める。

東工大はJR山手線駅前の田町キャンパス(同港区)で土地活用を進め、高層複合ビルの地代を通じ研究環境の強化を図っている。建築や都市計画に関する同大教員2人が、東京医科歯科大の特任教員となり、統合効果をにらみつつノウハウを共有していく。

日刊工業新聞 2024年04月22日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
土地活用は、マンション建設など単独使用ではなく、大々的な街づくりの一角に据えられると予定収入が跳ね上がります。これまで文部科学省は26国立大学法人の40件超に認可を出していますが、そのような例はごくわずかです。レアケースに東京医科歯科大も東工大も入っているということは、“相互リスペクト”につながって、新大学を成功させる上でも好ましいことでしょう。

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