コマツ・日立建機・コベルコ建機…建機メーカーがそろって開拓する“宝の市場”
国内建機各社が、そろって部品交換や修理などのアフタービジネス事業を強化している。コベルコ建機は1日付で「アフターセールス本部」を新設。コマツや日立建機、住友建機もそれぞれ独自開発した車両稼働情報収集システムを活用し、成果を上げている。アフターセールスは新車販売に比べ、短期的な売り上げ規模は小さいものの利益率は高い特徴があり、各社とも収益貢献が期待できる“宝の市場”として開拓に力を入れている。(編集委員・嶋田歩)
「これまで我々は商品開発で差別化し、売り上げを増やしてきたが、そうした考え方を改める必要がある」。コベルコ建機のアフターセールス本部長に就いた絹川秀樹取締役執行役員は新車販売第一主義からの脱却の必要性を強調する。理由はこうだ。各社の技術水準が向上し、革新的ショベルを市場投入しても短期間でライバル機が出てくる現状では、結果的に価格競争に陥らざるを得ない。当然、収益性は低下する。部品や材料高で新型ショベル価格が値上がりしていることもこの傾向に拍車をかける。「ユーザーにとって高い買い物になるため10年使って買い換えていた建機を12年とか、より長く使う傾向が強まっている」(絹川取締役執行役員)。
建設機械は岩盤やコンクリートの掘削など過酷な作業現場で使われることが多く、部品交換やメンテナンスは必須。10年、12年と使い続ければ、ライフサイクルコストもそれだけかさむ。人の健康診断と同じで、長く使うには定期的な健康診断や早めの予防措置が大切。コベルコ建機は「MERIT」、コマツは「コムトラックス」、日立建機は「コンサイト」など独自の情報システムを自社の建機に装着し、効果を上げている。
装着したセンサーの情報から稼働状況や燃料消費量、個々の部品にかかる負荷のデータなどを読み取り、遠隔で管理できる。ピストンポンプ部品が間もなく更新期を迎えるなど、そうした個別建機の情報を吸い取り、客の建設会社やレンタル会社に「この部品はそろそろ交換した方が良い」などとアドバイスする。情報システムが発達する以前は営業マンがまず現地に赴き、実機を診断してそれから対策を立てていたため複数回の訪問が必要だったが、データ活用で1回で済むようになり、交換部品もあらかじめ準備して訪問するなどで営業コスト削減はもちろん、客側にも修理期間などによる稼働ロスを最小化できる。「稼働時間から定期メンテナンスを案内したり、現場に行く前に修理内容を検討したりできる」。コムトラックスを活用するコマツの小引康弘デジタルソリューション部長は強調する。
アフターセールス事業の売り上げを増やすには営業マンの技能向上も欠かせない。日立建機は子会社の日立建機日本(埼玉県草加市)のテクニカルトレーニングセンタ(茨城県土浦市)で、点検リポートの作成アプリケーションの研修を始めた。コベルコ建機や住友建機は東南アジアやインド、中国など海外の営業マンも含めたサービス技能コンテストを毎年開催、切磋琢磨で技能向上につなげている。
【関連記事】 建機メーカーが大注目する異色のレンタル会社