工作機械は中国減速見られず。自動車投資が下支え
小型車への減税が奏功。日系メーカーはスマホ特需から乗り換える
日系各社「高付加価値」で攻略。現地生産で納期短縮
高性能の機械を欲する顧客の熱意に後押しされ、ジェイテクトは中国での工作機械の現地生産に踏み切った。従来は刈谷工場(愛知県刈谷市)などで生産した工作機械を、遼寧省大連市にある現地法人・豊田工機(大連)の工場に送り、ライン化などのセットアップを施してから顧客に納入していた。これを立型MCの「e640V」について、機械自体の組み立てからセットアップまでを豊田工機(大連)で一貫して行う形へと4月に切り替える。広汽乗用車から新たに受注した21台分もこの現地生産でまかなう考えだ。
生産の現地化で狙うのは短納期化だ。自動化には機能追加などに関する顧客との調整が不可欠。それが容易になり、迅速な対応が可能になる。
「ニーズ絶対ある」潜在需要掘り起こす
「これから手動の機械を使っているお客に『自動化しましょう』という提案を広げる。絶対にニーズがある」と井坂雅一ジェイテクト副社長は語気を強める。顧客の要望に即応できる生産体制を整えたのを機に、中国のモノづくり現場に眠る自動化の潜在需要を掘り起こす構えだ。
中国は自動車の生産能力が過剰だと指摘されるが、自動車の燃費や環境性能を向上させる新パワートレーン向けの設備投資は、上海ショック以後も続いている。品質に優れる高付加価値の日本の工作機械がこうした需要の受け皿だ。
ジェイテクトと同様に自動車の部品加工ラインを得意とする三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)は、変速機の部品を製造する歯車加工機が堅調だ。さらに「民族系自動車でプロジェクトがあり、来年度くらいのスパンだと(市場は)暗くない」(白尾誠二社長)と設備投資の継続を予想する。
中国国内に小巨人工場(銀川市)と遼寧工場(大連市)と二つの工場を持つヤマザキマザックも中国向けに旋盤やMCなどの小型機を現地生産しており、「中国国内の自動車産業向けにもターンキーを含めて対応している」(経営企画室)。
日本製の強みが生きている
日本工作機械工業会(日工会)がまとめた受注統計も、中国の自動車向けの受注は振れ幅が比較的少ないことを示す。自動車に限らず、スマホ向けの特需要素を除いた”実需“は、中国株式市場で上海総合指数が急落した15年夏以降は弱含みだが、中国経済が不安視されている中で底堅さがうかがえる。
特に自動車向けは「日本の工作機械に限ると順調。技術革新を伴う投資に対応している」(牧野二郎日工会副会長)と、日本製の強みが生きているという。スマホ特需が一服し、「次の特需はどこかで来るが、私見では今年はない」(同)という中、自動車向けが中国の工作機械需要を下支えする構図が続きそうだ。
(文=名古屋・江刈内雅史、六笠友和)
日刊工業新聞2016年3月28日「深層断面」