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建設機械「ニューノーマル」へ

成長軸は中国変調・偏重からIoTに移るか

鉱山機械、需要回復に時間


 「2016年も新車投資は期待できない」(辻本雄一日立建機社長)―。中国経済の減速は、中南米や豪州の鉄鉱石や石炭鉱山で稼働する大型機械の販売不振を引き起こした。

 資源消費大国の中国景気が減速し、供給過剰が生じたことで、資源価格が大きく下落した。それが超大型のダンプトラックや油圧ショベルなど鉱山機械の需要低迷を招いた。12年ごろをピークに販売は落ち込み、15年も振るわなかった。

 英豪資源大手リオ・ティントなど鉱山を運営する資源メジャーは、鉱山機械のオーバーホールを延期するなど、投資を抑えてきた。現在はオーバーホールはあるが、新車への買い替えが起きていない。資源メジャーの数社が3月に鉱山の権益売却や減損処理を発表するなど、苦境が続く。

 「16年も落ちるが、落ち方はスローダウンしていく」―。コマツの大橋徹二社長は販売低迷の底が近いと予測する。資源メジャーの業績不振の影響を危惧するものの、15年末に数社の経営者と会い、17年には新車投資を再開したいという意向を確認したという。

 それまでの間、販売不振の影響をどう軽減するか。コマツや日立建機は、本体販売以外の部品、アフターサービスを伸ばす戦略を進めてきた。日立建機の辻本社長は「最適な時期にメンテナンスを提案するなどライフサイクルコストを下げる」と方針を説く。

 実際、両社はここ数年、本体販売の落ち込みを部品、サービスの増加で補ってきた。コマツの機械稼働管理システム「コムトラックス」など、稼働状況分析による運転の改善支援も進めた。

 だが、最近はサービス部門の売上高を伸ばすのが難しくなっている。資源メジャーが社内の雇用維持のため、コマツなどに依頼していたメンテナンスなどのサービスを内製化する動きが出ている。

 資源メジャーの経営不振の影響が本体以外にも及んできた格好だ。だがコマツの大橋社長は「内製化して稼働率が落ちていることを彼らも理解している。緊急避難としての判断で、ずっとは続かないだろう」と慌てる様子はない。中国を発端とする資源需要の低迷が一段落し、新車投資が再開されれば、鉱山機械の販売不振は解消に向かう。

 世界の資源・エネルギー需要は長期的に増加し、鉱山機械の需要も伸びると期待される。苦境のいまの時期に部品、サービスを鍛え、鉱山機械事業の体質を強くしてきたことも生きてくる。新たな局面を迎えた時のための備えが続く。

<次のページは、IoTで需要掘り起こし>

2016年3月24日/25日/28日機械
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
建機業界は世界経済の影響を受けやすく、これまでも多くの浮き沈みを経験してきた。各社のトップは「上がることも下がることもあるのがこの業界」とよく口にする。とはいえ、中国市場の不振について、「これまで経験したことがない」と表現した人もおり、今までにない逆風を受けていることは確かだ。連載で紹介していないが、各社は工場の電力削減、生産改革にも取り組んでいる。自分たちができる範囲のことは着実にしている印象だ。コマツがIoTを駆使したサービス型ビジネスに熱心なのも、建機業界の将来を見据えてのことだ。危機の中でこそ、新たな時代への芽が育つもの。建機業界の明日はそれほど悲観的なものではないだろう。(日刊工業新聞社編集局第一産業部・戸村智幸)

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