スイングバイIPOのソラコム…IoT基盤攻勢、「継続課金」売上高年30%増への戦略
ソラコムはIoT(モノのインターネット)基盤を生かしたリカーリング(継続課金)サービスの売上高を毎年30%以上増やす重要業績評価指標(KPI)を掲げる。IoTシステム開発に必要な各機能を22のサービスとして用意し、顧客は必要な機能を利用してサービスを構築するSaaS(ソフトウエアのサービス提供)型のIoTビジネスを日米欧で拡充。生成人工知能(AI)の普及であらゆるデジタルデータを必要とする企業からの需要を取り込む。
ソラコムは180の国・地域の392の通信キャリアに対応したIoT向けのデータ通信を軸に、データ可視化やアラート通知などの各種サービスをクラウド経由で提供。顧客はこれらのサービスの中から必要な機能を組み合わせてスマートメーターや自動検針、太陽光発電設備の遠隔監視、輸送トラックの追跡管理サービスなどを構築している。
急速なデジタル化に伴うIoT需要を取り込み、契約数は600万回線を突破。23年度の売上高は約80億円の見込みだ。この約7割をリカーリングサービスが占める。粗利率の高い同サービスは5期連続を見込む営業損益の黒字化に貢献しており、20―23年度の売上高の年平均成長率は32・7%となる見通し。
国内に約100人、米国に約30人、英国に約20人の計150人いる社員も年30―40人規模で増やす。日本より市場規模が大きい欧米での販売体制を強化。KDDIや2月に協業を発表したスズキとコネクテッドカー(つながる車)分野でのIoT活用も推進する。
ソラコムは17年にKDDIの傘下入り。スタートアップが大企業の支援で成長し、上場を目指す「スイングバイ新規株式公開(IPO)」による上場の準備を20年から進め、3月26日に東証グロース市場への上場を果たした。
インタビュー・生成AIで新ツールを/社長・玉川憲氏
ソラコムの創業者である玉川憲社長に14年の創業、17年のKDDI傘下入りに次ぐ、東証グロース上場という“第3章”への思いを聞いた。(編集委員・水嶋真人)
―23年2月に経済環境を踏まえた上場延期がありました。
「市場動向は我々でどうすることもできず非常に悔しい思いをしたが、1年延期したことで上場企業としての組織力を高められた。スタートアップが日本の大企業と、信頼関係を基に手を取り合いながら上場を目指すスイングバイIPOという日本らしい形を今回実現できた」
―スイングバイIPOの魅力をどう感じていますか。
「上場したら関係が終了して株式も売却される関係ではなく、上場はマイルストーンでその先も一緒にやっていく長期的な関係性が続く。この新しい仕組みにより、今後どのようなものを切り開いていけるかを非常に楽しみにしている」
―生成AIの普及が業績拡大の追い風となります。
「当社のIoT基盤を使えば生成AIに必要なさまざまなデータを集めて解析し、使いこなせるようになる。IoT機器の個々のデータは少量だが、あらゆる種類のあらゆるIoTデータを集め、生成AIにより顧客企業が新たな知見を得られるツールを当社が開発できるはずだ」