ネオジム磁石の材料設計に生かす。物材機構が高精細シミュレーション開発
材料設計に活用
物質・材料研究機構のボリャーチキン・アントーンICYSリサーチフェローとセペリ・アミン・ホセイングループリーダー、大久保忠勝副センター長らは、ネオジム磁石の高精細シミュレーションを開発した。特性を左右する粒界の構造を精緻に再現した。すると外部磁場に負けないよう磁区の向きをピン止めする様子を可視化できた。ネオジム磁石の材料設計に活用する。
ネオジム磁石を集束イオンビーム(FIB)で削りながら走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、詳細な3次元(3D)モデルを作製した。この磁性をシミュレーションするために、小さな四面体を詰め込んだ有限要素モデルを作る。この際に厚みが2ナノ―4ナノメートル(ナノは10億分の1)の粒界相を再現するアルゴリズムを開発した。
粒界同士がつながる粒界三重点を導入してシミュレーションすると、粒界相は強磁性、粒界三重点の一部が弱磁性の条件だと実験の結果をよく再現した。結晶粒界によるピン止め効果も再現できた。
ネオジム磁石の保磁力は理論限界の2割程度に留まっており向上の余地がある。粒界のような微細構造をシミュレーションして最適構造や物性を求め、磁石開発に反映する。
日刊工業新聞 2024年03月11日